栽培面積の拡大が容易であるミニパイプハウス栽培の例として徳島県特産の春夏ニンジンがあり,端境期出荷による安定した収益が得られる.ミニパイプハウス栽培において,気温や生育に応じたハウスの穴開けによる換気量の調整が非常に重要であるが,その判断には長年の経験と勘が必須であり産地強化の課題となっている.本研究では,ミニパイプハウス内の環境データと生育状況から,農家向けハウスの穴開け換気量判断支援システムを開発することである. 本研究の成果は次の通り.1)ミニパイプハウス用低価格環境センサの開発で,LPWAモジュールであるLoRaやSigfoxを採用し,冬期のハウス内でも稼働可能な独立電源込みで1台1万円以下の材料費で,温度・湿度・日射量・土壌水分を測定してクラウドにデータアップ可能な環境センサを開発した.2)ハウス内生育判断用カメラシステムの開発 環境センサとは独立したニンジンの葉の成長状況を自動撮影しリモートで確認,自動解析可能とするシステムのプロトタイプを開発した.3)栽培期間中のハウス内環境情報とニンジン生育情報の収集を,開発したシステムを使って収集した.4)春夏ニンジンミニパイプハウス換気量支援システムの開発では,徳島県立農林水産総合技術支援センターの試験圃場で実施した換気率別の外気温とハウス内の最高温度の関係データを元に,播種日からの日積算温度の標準カーブと,栽培中のハウスの日積算温度カーブを比較表示できるWebページを作成し,試験圃場および2つの栽培農家にて実証実験を行い,栽培支援に有効であることを確認した.
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