研究課題/領域番号 |
17K08025
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
下田 星児 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 上級研究員 (80425587)
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研究分担者 |
菅野 洋光 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 主席研究員 (30355276)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 北日本 / ジャガイモ / IPO / 4月平均気温 / 8月平均気温 / 気温の相関関係 / 熱帯対流活動 / インドネシア |
研究実績の概要 |
北海道の平均気温は、1990年代前半の冬の昇温、2010年以降の夏季の昇温に分けられことが分かった。この温暖化の季節的偏りは、太平洋の海水温の十数年周期の変化(太平洋十年規模振動:PDO)と関連する可能性があり、ジャガイモの収量減少と連動していた。作業イノベーションに関し、品種変更に焦点を当て、澱粉原料用ジャガイモの栽培が多いオホーツク地域において、高収量型品種「紅丸」から高澱粉品種「コナフブキ」へ変更した1990年代後半に収量減少の変化点が検出された。これらをまとめ、論文1報を発表した。 冬季の気象では、土壌凍結と小麦の関係について4年間の圃場試験の結果から、土壌凍結自体は小麦の収量を減少させないことが分かった。 2018年の北日本における4月と8月の月平均気温偏差は、4月が+1.3℃、8月が-0.5℃で、2017年に続いて4月高温・8月低温の組合せとなり、1998年以降の4月と8月の月平均気温の相関係数は0.76、決定係数は0.58と高い値を維持している。2015年以降、地球温暖化の停滞(hiatus)が終わり、全球気温の上昇期に入ったようにみえるが、まだそれ以前の作用メカニズムが働いている可能性がある。一方、北日本の各月ごとの相関係数を計算したところ、7月が他のどの月とも相関を示さなかった。特に北日本のイネにとって7月は重要な時期であるだけに、その変動特性が明らかになったのは重要な成果である。 NINO.3(エルニーニョ監視海域)のSSTについては、北日本の気温変動に対する全球規模の役割のほかに、熱帯島嶼国であるキリバス共和国の降水量変動に直接的に影響していることが明らかとなり、その多面的な役割が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北海道のジャガイモ生産について、温暖化の季節的偏りが収量を減少させる点を明らかにできた。春の高温年は、大規模な遅霜被害が発生する場合(1998年など)があり、ジャガイモの収量は、春季より夏季の温度に対する依存性が高くなることが分かり、4月/8月気温のラグ相関関係との関連が薄くなることが示唆される。また、小麦生産について、過去の圃場試験データから、土壌凍結の深さ自体が収量に与える影響は小さいことが分かった。統計データと圃場試験データから、気象や作業イノベーションが作物収量に与える影響を示せた点で、研究は順調に進展しているといえる。 2017年までのSVD解析でNINO.3海域のSSTの果たす役割の重要性が明らかになったが、2018年における北日本の4月/8月気温が2017年に続いて負の関係を示したことで、対象期間を最新のものに拡張した新たな統計解析の必要性が出てきた。
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今後の研究の推進方策 |
ジャガイモ以外の作目に関しても、過去の統計データや長期の栽培試験の結果から、作業イノベーションを見出せる可能性があり、対象となる作目範囲を拡大し解析を行う必要がある。また、ジャガイモでは明確にならなかった4月/8月気温のラグ相関関係が収量に与える影響についても、作目範囲を拡大して検討を行い、総観スケールの気象と関連する事象を示したい。 北日本における4月/8月気温のラグ相関関係の天候予測インデックスとしての利用可能性について、NINO.3海域のSSTや大規模場の気象要素との解析に基づいて引き続き検討を進める。インドネシア共和国ジャワ島における気象観測ロボットのデータを2019年度に2度回収し、トータルで2014~2019年の5回の雨季の事例について、NINO.3海域のSSTおよび北日本4月/8月気温のラグ相関との関係に着目して解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度データ入力補助に関連した雇用の遅れに伴うデータベース作成の遅れを引きずっているため。最終年度は、継続してデータ入力を行いながら、とりまとめを行う。
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