過去の統計収量から、北海道の小麦収量の長期変動に対し、登熟期間の気象の寄与が大きいことが明らかになっている。十勝地域は、本州の梅雨時期に、通称蝦夷梅雨と呼ばれる曇天期があり、6月中旬から日照不足に見舞われる年がある。6月下旬から7月中旬は小麦の登熟期間に当たり、曇天期間が長引く年は生産量が大きく減少する。北海道の主要小麦品種である「きたほなみ」と「ゆめちから」を対象に、人為的に曇天条件を再現する遮光試験を行い、登熟期間中の小麦子実の充実程度を明らかにした。 6月中旬から、群落を遮光シートで覆う試験を行い、極端な曇天が続く気象条件を再現した。日射量の多く、開花から遮光開始までの期間が比較的長い2015年は、遮光による最終粒重の減少が比較的小さいが、「きたほなみ」では、登熟中期で遮光による粒重の減少が見られた。2017年は、「きたほなみ」で登熟中期から遮光による有意な粒重の減少が見られる一方、同年の「ゆめちから」は最終子実のみで遮光影響が見られた。2016年のように元々が曇天条件で更に遮光を行うと、品種に関わらず登熟初期から粒重が減少した。「きたほなみ」は「ゆめちから」より出穂・開花期が1日から4日遅れた。十勝地方で見られる曇天条件を再現するため、6月中旬の同じ日に両品種とも遮光を開始しており、「きたほなみ」では、開花期から日射低下が想定される時期までの期間が短い。特に開花から遮光までの期間が短い2017年に遮光による「きたほなみ」の粒重減少への影響が顕著である。「きたほなみ」が遮光影響を受けやすいのは、開花期が遅いことが最も大きな要因であった。
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