研究期間の最終年度となる今年度は、本申請課題に関連した植物病の自動診断および、関連する多次元データの低次元表現獲得に関して、論文1件、査読付き国際会議論文3件、国内発表6件(うち2件は情報処理学会より奨励賞受賞)の成果を得た。本研究の主たる対象植物であるきゅうりの他、トマト、いちご、ナスの計4作物について、共同研究を行っている24府県および農研機構(国研)より計20万枚を超える病害ラベル付き画像提供を受け、目標である診断精度平均8割以上の診断性能を実現した。さらに自動診断システムとして実際に現場で使えるようwebで公開した。(現時点では共同研究機関のみ。協力企業のスマートフォンアプリを介して今後一般公開予定。) 本研究の遂行において、これまで論文等で触れられてこなかったこの分野の致命的かつ重要な課題である「データセット内の背景などの類似性による見た目の診断精度向上」を明らかにした上で、具体的な対策手法(病変部位を含む葉や茎などの対象領域の高精度な抽出、およびそれを用いた頑健な学習法)を開発した。また、監視カメラなどを用いた実践的な広範囲の遠隔自動診断を行うための診断手法の提案、そのための実践的な超解像手法の提案を行い、実際の現場における診断能の向上を確認した。 また深層学習の大きな課題である過学習への対策として、データの本質を残したデータの低次元表現の獲得や、正確な病害ラベルのついた学習用の画像データの不足問題に対する実践的な成果を得た。特に後者は、こうした高価な教師ラベルつき画像を事実上無限に"生成"でき、またそれにより深層学習器の診断精度の向上を確認した(現在IEEE Trans誌条件付き採録)。こうした成果は植物病の自動診断において極めて重要な技術で、今後の実用化に大きく貢献できると考えている。
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