鳥類においては、受精卵の長期保存ができないことから、生殖幹細胞(gSCs)を利用し、生殖系列キメラ(GLC)を用いた遺伝資源保存方法の開発が進められてきた。ニワトリにおいては、これまでに、孵卵2日~9日胚由来の生殖系列幹細胞(gSCs)を用いたGLC作製が試みた結果、孵卵9日の雌胚由来のgSCsを用いた場合を除きGLCが作製された。さらに、生殖キメラの作製効率はPGCs > 5日胚GGCs > 7日胚GGCs >9日胚GGCsの順に高いこと、ならびに生殖系キメラの作製効率は、同性間移植の方が異性間移植より高いことが示された。 これは、胚の発生が進むのに伴いgSCsの性分化が進むためであると考えられることから、本研究においては、雌雄の孵卵2.5日、5日、7日および9日胚の生殖巣からPBS(-)法を用いて純粋の高いgSCsを回収した後RNAを抽出した後、RNA-seq法を用いて遺伝子群の発現量解析を行った。その結果、1) 多能性関連遺伝子群の発現量は、雌雄いずれの胚から回収されたgSCsの場合においても2.5日胚から5日胚にかけて著しく低下する事、2) gSCsにおける生殖細胞特異的遺伝子群の発現量は孵卵日数の増加に伴い経時的に低下する事、3) SgCsにおける減数分裂関連遺伝子群および生殖細胞特異的遺伝子群に経時的な変化並びに雌雄差が認められない事が明らかになった。 以上の結果から、gSCsを回収するために用いた孵卵日数の違いによる生殖キメラの作製効率の違いは、gSCsの分化に伴う転写活性の変化に起因する可能性が示された。今後は、2日胚から回収されたgGCsの分化開始を制御する最上流因子の同定を目指す。
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