研究課題/領域番号 |
17K08042
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
米倉 真一 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (40443113)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 骨格筋細胞分化 / 小胞体ストレス応答 |
研究実績の概要 |
骨格筋は、筋芽細胞が細胞融合し多核の筋繊維(筋管細胞)に分化することによって形成される。小胞体ストレス応答分子であるXBP1をノックダウンすることにより、単核細胞の選択的排除の表現型を有することを明らかにしている。2017年度の研究より、筋芽細胞の筋管形成過程において、XBP1ノックダウン細胞ではオートファジーの亢進が生じていることを明らかにしている。2018年度においては、アポトーシス誘導性細胞死に着目して検討を行った。 XBP1ノックダウン細胞では分化過程を通してコントロール細胞と比べて有意な死細胞の増加が確認された。アポトーシス実行因子であるCleaved-Caspase3の発現を検討した結果、XBP1ノックダウン細胞では分化誘導後12時間において発現が急激に増加していた。XBP1ノックダウン細胞でのCleaved-Caspase3の発現パターンは、死細胞数の急激な増加と一致していたことより、XBP1ノックダウン細胞は分化誘導直後に急激なアポトーシス細胞死を生じることが示された。 続いて、XBP1ノックダウン細胞の表現型がXBP1の上流分子であるIRE1を介するものであるのか明らかにするため、IRE1ノックダウン筋芽細胞を作製し、その分化能を検討した。その結果、IRE1ノックダウン細胞では全く筋管が形成されなかった。さらに、XBP1sの誘導に必要なIRE1のRNase活性が筋分化に及ぼす影響を検証するため、IRE1のRNase特異的な活性阻害剤である4μ8cの添加実験を行った結果、4μ8c処理細胞では筋管形成が著しく減少した。 以上の結果より、XBP1ノックダウン細胞ではアポトーシスの亢進が生じていること、さらにIRE1-XBP1シグナルが、分化直後の細胞生存や分化進行において重要な役割を担うことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目である本年度は、XBP1をノックダウンすることにより生じる、筋管形成過程の単核細胞の選択的排除のメカニズムが、アポトーシスの亢進によるものであることを明らかにすることが出来た。さらに、XBP1の上流分子であるIRE1のノックダウン細胞およびIRE1のRNase特異的な活性阻害剤を用いた実験より、IRE1-XBP1シグナルが、分化誘導刺激後(外環境変化)の細胞生存や分化進行において重要な役割を有していることを明らかにした。これまで、骨格筋細胞分化において、分化誘導刺激後(外環境変化)の細胞内応答機構は全く不明であったが、今年度の研究成果より、IRE1-XBP1シグナルの重要性が示唆された。よって筋形成におけるXBP1の役割解明を目指す本研究の2年目の計画を十分に達成している。
|
今後の研究の推進方策 |
活性化XBP1は核に移行して転写因子として働くことから、骨格筋細胞分化の初期において転写調節している遺伝子を同定することを目指す。具体的には、分化誘導刺激直後のコントロール細胞とXBP1ノックダウン細胞を用いて、RNAseq解析をすることで、網羅的に発現変動のある遺伝子を明らかにする。その後、Chipアッセイやルシフェラーゼアッセイにより、XBP1が転写調節する具体的な遺伝子を明らかにする。さらに同定した遺伝子のノックダウン細胞を作製し、分化誘導刺激後の表現型がXBP1ノックダウン細胞と同様であるのか検討することで、筋形成におけるIRE1-XBP1経路の詳細を明らかにしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、年度末の試薬キャンペーンによって、消耗品の出費が予想より若干、節約できたことから、次年度使用額が生じる結果となった。 次年度のルシフェラーゼアッセイの消耗品に使用し、次年度使用額として有効に使用する。
|