研究課題/領域番号 |
17K08047
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川端 二功 九州大学, 農学研究院, 助教 (40633342)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ニワトリ / 味覚 / 油脂 / 脂肪酸 / GPR120 / CD36 |
研究実績の概要 |
H29年度の研究により、ニワトリがどのようにして油脂を口腔内で感じているかについて一定の成果を得ることができた。これまでに、脂肪酸受容体であるGPR120がニワトリの味蕾が存在する口蓋に発現し、油脂の味を感じるセンサーの一つであることは明らかにしていた。H29年度の研究では、また別の脂肪酸センサーであるCD36の遺伝子をニワトリ口蓋よりクローニングし、塩基配列を同定することができた。ニワトリCD36を組込んだプラスミドを作製したので、これを用いて今後一過的発現細胞を構築することができるようになる。塩基配列はセキショクヤケイと比べて二箇所に変異が見られ、アミノ酸レベルでも二箇所の違いがあった。次に、脂肪酸センサーであるGPR120とCD36の発現部位をRT-PCRで検証したところ、いずれも口腔組織および消化管組織に幅広く発現していることが明らかとなった。面白いことに、CD36に関してはクチバシにも発現が見られ、クチバシにおいても脂肪酸を検出している可能性が推察された。 上記のように、脂肪酸センサーが口腔組織に存在することはわかったが、飼料中の油脂はトリグリセリドの形をとっていることが多い。従って、トリグリセリドのままでは脂肪酸センサーには結合できないことから、口腔内リパーゼの存在が不可欠であると考えた。ニワトリのクチバシ、口蓋、舌を採取し、それらの組織ホモジネートのリパーゼ活性を検証したところ、膵臓と比べて約三分の一、ならびに腺胃と同程度のリパーゼ活性があることがわかった。また、それらの組織に各種リパーゼ遺伝子の発現が幅広く見られることをRT-PCRによって明らかにした。以上の結果より、ニワトリは飼料中のトリグリセリドを口腔内リパーゼで脂肪酸に一部消化し、脂肪酸がGPR120やCD36等の脂肪酸センサーに結合することで油脂の味を感じていることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CD36のクローニング、口腔内リパーゼ活性の解析、並びに各種リパーゼ遺伝子の発現の検証などを実施することができ、ニワトリの油脂の味覚受容機構を明らかにする上で重要な部分を解明できたと考えられる。従って、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにニワトリ口腔内にリパーゼが存在すること、並びに脂肪酸センサーであるGPR120やCD36が発現していることを明らかにしてきた。また、GPR120に関しては機能的な脂肪酸受容体であることをGPR120発現細胞を用いて示してきた。今後はニワトリ個体を用いて各種脂肪酸に対する嗜好性を検証する。また、CD36が機能的な脂肪酸センサーであるかどうか検証するため、CD36を発現させた細胞を用いて脂肪酸取り込みアッセイを行う。さらに、ニワトリから味蕾を単離し、カルシウムイメージングにて脂肪酸に対する応答性を検証することで、脂肪酸感受性細胞が味蕾に存在するか明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画よりもカルシウムイメージングによる検証実験の試行回数が少なかったことから、消耗品費の消費が抑えられた。また、購入予定だった設備が、当初見積よりも大幅に安く購入できたため差額が生じた。H30年度は実験の試行回数をH29年度よりも増やす必要があるため、消耗品費の支出が増えると予想している。
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