研究課題
最終年度には、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸といった鶏の飼料にも含まれている3つの脂肪酸が、ニワトリの油脂の化学感覚受容体であるGPR120を活性化することをカルシウムイメージング法により見出した。これまでニワトリGPR120のアゴニストとしてリノール酸およびオレイン酸を既に見出していたが、本結果も合わせて考慮すると飼料中に含まれている多くの脂肪酸がニワトリGPR120を活性化する脂肪酸であることがわかってきた。研究期間全体を通して、ニワトリの口腔組織には多くのリパーゼ遺伝子が発現していることがRT-PCR法により明らかとなった。飼料中の油脂を脂肪酸受容体が受容するためには油脂を口腔内リパーゼによって脂肪酸に分解することが必須であると予想されるが、本研究によりニワトリ口腔内に多種類のリパーゼが存在する可能性が考えられた。また、ヒナを用いた行動試験において、ニワトリヒナはオレイン酸を溶かした溶液に対して顕著な嗜好性を示すことはなかった。一方で、オレイン酸の口腔内刺激と、薬剤投与による内臓不快感を連合学習させることには成功したことから、ニワトリが脂肪酸を口腔内で化学感覚として受容していることが示唆された。以上の結果より、ニワトリがGPR120という脂肪酸受容体により、飼料中に含まれている脂肪酸を口腔内で化学感覚として受容していることが明らかとなった。本研究によりニワトリの油脂の化学感覚受容機構の一端が解明されたが、これらの結果はニワトリの嗜好性を人為的に制御する方法の確立に貢献できるものと考えている。
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