研究課題/領域番号 |
17K08051
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
平野 貴 東京農業大学, 農学部, 教授 (50605087)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Marbling-2 / Q型とnon-Q型 / 定量的RT-PCR / 発現量差 / RNA抽出とcDNA合成 |
研究実績の概要 |
種雄牛AからMarbling-2のQ型とnon-Q型を遺伝した各3産子から肥育期間中に採取した最長筋組織の20ヶ月齢時サンプルを用いて行ったRNA-Seqデータを条件変更して改めて解析した。その結果、有意に2倍以上Q型3個体とnon-Q型3個体間で発現量が異なる遺伝子が26個検出された。これら発現量差を再解析するために、20ヶ月齢時サンプルのRNAを用いてcDNAを合成した。これら26遺伝子に対してプライマーを設計し、定量的RT-PCRを試みた。その結果、13個の遺伝子で正常な増幅が確認され、これら遺伝子は20ヶ月齢時の最長筋で発現していることが示唆された。Q型3個体とnon-Q型3個体間で有意差(p<0.05)が検出された遺伝子は4遺伝子(Q>non-Q:1遺伝子、Q<non-Q:3遺伝子)であり、有意傾向(p<0.1)であったものが2遺伝子(Q>non-Q:1遺伝子、Q<non-Q:1遺伝子)であった。Q<non-Qで有意傾向の1遺伝子は、WNT signaling pathwayを抑制する遺伝子であった。そのため、その遺伝子は脂肪細胞分化にも関係すると示唆され、霜降り形成に関わる可能性も考えられる。また、その遺伝子の発現にMarbling-2領域に位置する遺伝子が関係することも示唆されている。 最長筋組織は肥育期間中の異なる時期に11回採取されている。その66組織(11回×6頭)のうち、20ヶ月齢時以外の10回60組織からはRNA抽出とcDNA合成が行われていない。今回発現が確認された遺伝子の肥育期間中発現変動を調べるために、残りの60組織からRNA抽出とcDNA合成を行う必要がある。これまでに、36組織についてRNA抽出を行い、21ug以上のRNAが抽出できている。これらRNAの分解程度に問題ないことが電気泳動で確認できたため、cDNAを合成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の計画で、RNA-SeqでQ型Marbling-2産子とnonQ型産子間で発現量差が検出された22遺伝子について定量的RT-PCRを行い、発現量差が確認された遺伝子についてデータベース解析を行い、その遺伝子の上流で作用する遺伝子にMarbling-2遺伝子領域に位置する遺伝子を探索するとしていた。また、20ヶ月齢時に発現量が異なる遺伝子が、肥育中にどのように発現が変動するのかを明らかにするために、肥育期間中に採取した全6頭の最長筋組織からRNAを抽出し、cDNAを合成するとしていた。 実際には、RNA-Seqデータを改めて解析して発現量差が検出された26遺伝子について定量的RT-PCRを行い、13個の遺伝子が20ヶ月齢時の最長筋で発現していることを確認した。また、これらの6遺伝子はQ型産子とnonQ型産子間で発現量が異なる可能性が示された。さらに、そのうちの1遺伝子は、Marbling-2領域に位置する遺伝子によって発現影響を受ける可能性のある遺伝子であった。RNA抽出およびcDNA合成は36組織について行い、全組織のcDNAが揃っていないが、過半数以上は完了し、方法も確立したため、概ね順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
定量的RT-PCRで発現量差が確認された遺伝子を始め最長筋で発現が確認された13遺伝子の肥育期間中発現変動を調べるために、残りの組織についてRNA抽出とcDNA合成を完了する。これらcDNAを用いて13遺伝子について定量的RT-PCRで発現量解析する。特に、今回検出されたWNT signalingを抑制する遺伝子のQ型産子とnonQ型産子間の発現量差の有意性が他時期組織で高まった場合、その発現に関係するMarbling-2上の遺伝子は脂肪交雑責任遺伝子の候補となるため、多型探索用のプライマーを設計し、種雄牛Aを用いて多型探索を行う。その多型の型判定をMarbling-2検出に用いた種雄牛A家系について行い、Marbling-2と脂肪交雑の関連がさらに強くなることを確認する。 RNA-Seqで発現量差が検出された26遺伝子のうち、今回定量的RT-PCRで発現が確認できた13遺伝子以外の遺伝子についてプライマーを再設計し、再度、定量的RT-PCRでQ型産子とnonQ型産子間の発現量解析を行う。差が確認された遺伝子について、同様に肥育期間中の発現変動を解析するとともに、データベース解析を行い、Marbling-2領域に位置する遺伝子との関係を調べる。今回検出したWNT signalingを抑制する遺伝子の有意性が高まらない場合は、この再解析によって確認された遺伝子の多型を探索し、同様に解析する。 また、Marbling-2遺伝子領域に位置する遺伝子を検出できなかった場合は、発現量の差が確認された遺伝子でMarbling-2以外の黒毛和種脂肪交雑QTLに位置する遺伝子を候補として多型を探索し、脂肪交雑との関連を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度にRNA抽出およびcDNA合成を全60組織について行う予定であったが、24組織については年度内に実施することができなかったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、平成30年度にこれら24組織のRNA抽出およびcDNA合成を行うことで使用する。当該年度助成金は研究計画に従って使用する。
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