脂肪交雑QTLであるMarbling-2がQ型とnon-Q型の各3頭から肥育期間中(9ヶ月齢~26ヶ月齢)に採取した最長筋組織のうち、20ヶ月齢時の組織においてQ型とnon-Q型間で発現量の異なるWNT signaling pathwayを調節する遺伝子(Q < non-Q:P<0.1)について、これら6頭における肥育期間中の発現変動を調べた。その結果、9ヶ月齢時(p<0.05)と24ヶ月齢時(p<0.1)の発現は20ヶ月齢時と異なり、Q > non-Qを示した。黒毛和種の肥育は、脂肪交雑を高めるためにビタミンA(VA)給与を制限して行われるが、その効果が脂肪交雑に現れる制限時期は肥育前期から中期であることが示されている。9ヶ月齢または20ヶ月齢はこの期間にあたり、この発現量差は脂肪交雑に関連する可能性があるため、この遺伝子の多型を探索したが関連する多型は検出されなかった。 また、non-Q型の1頭は他の2頭よりもBMSが高いため、これら1頭と2頭間でRNA-Seqデータを再解析し、Marbling-2関連とは異なる脂肪交雑遺伝子の探索も試みた。その結果、有意に発現量が異なり(P<0.05)、報告されている黒毛和種の脂肪交雑QTL近傍に位置し、ノックアウトマウスは除脂肪体重が増加することが示されている遺伝子が検出された。そこで、この遺伝子の多型を探索し、枝肉形質との関連を解析したところ、枝肉重量との関連が示されたが、脂肪交雑との関連は検出されなかった。 さらに、最長筋組織で発現している遺伝子から脂肪交雑形成に関連する遺伝子を探索するために、細胞のVA取り込みに機能するSTRA6を候補として多型を探索したところ、VA輸送孔に隣接するアミノ酸置換SNPを検出した。このSNPは脂肪交雑と有意に関連したことから、アミノ酸置換によりVA取り込みが低下し、脂肪交雑が高まると考えられた。
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