研究課題/領域番号 |
17K08052
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
大滝 忠利 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (10434101)
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研究分担者 |
古山 敬祐 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 農業研究本部根釧農業試験場, 研究職員 (50611026)
梶川 博 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (90414705)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 乳牛 / ルーメン(第一胃) / エンドトキシン / 繁殖機能 / 肝機能 |
研究実績の概要 |
本研究では、エネルギー不足を補うための濃厚飼料多給に起因したルーメン内エンドトキシン(リポポリサッカライド:LPS)濃度上昇と肝臓でのLPS 解毒処理能力が繁殖機能に与える影響を検証するために以下の研究を実施した。 1.亜急性ルーメンアシドーシスモデル牛によるルーメン内LPS上昇後のLPS分布動態の解析 乳牛4頭を用いて、対照群はチモシー主体の飼料で飼養し、濃厚飼料多給群はエネルギー充足率を100%とし、飼料乾物中の粗飼料を40%から30,25,20%となるようにチモシーを段階的に毎週減らして(4週間)、トウモロコシ、大豆粕主体の飼料で飼養した。発情同期化処置を行い、発情前後の末梢血中プロスタグランジンF2α代謝産物(PGFM)、ハプトグロビン(Hp)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、LPS、LPS結合蛋白(LBP)を測定した。また、ルーメン液、卵胞液、子宮灌流液、肝門脈・肝静脈血中のLPS濃度を測定した。ルーメン液中のVFA濃度を測定した。 その結果、Hpは濃厚飼料多給前に比べて4週間後に有意に上昇し 、対照群に比べ濃厚飼料多給群で酢酸/プロピオン酸比は有意に低下した。ルーメン内LPS濃度は対照群で12.8EU/Lから濃厚飼料多給群で30.8EU/mlに変化した。一方、ルーメン内LPS濃度と卵胞液や子宮灌流液、肝門脈・肝静脈血中LPS濃度、PGFM、TNF-α、LBPとの間には明らかな関係は認められなかった。このことからルーメン内LPS濃度が上昇したとき、炎症によりHpが上昇したものと推察された。 2.泌乳牛のルーメン内LPS濃度と繁殖機能との関係 泌乳牛25頭からルーメン液を分娩後約3日、4、8、12週に採取した。その結果、ルーメン内LPS濃度が50EU/Lを超える個体が一部存在した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
亜急性ルーメンアシドーシスモデル牛によるルーメン内LPS上昇後のLPS分布動態の解析については当初の研究計画で予定していた実験内容が順調に進められている。一方、泌乳牛のルーメン内LPS濃度と繁殖機能との関係については、サンプリングについては概ね計画通りに進んでいるが、LPS測定キットの供給一時停止に伴い、解析が滞っている。
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今後の研究の推進方策 |
亜急性ルーメンアシドーシスモデル牛によるルーメン内LPS上昇後のLPS分布動態の解析については、対照群に比べ濃厚飼料多給群で酢酸/プロピオン酸比とルーメン内LPS濃度が有意に上昇したが、卵胞液や子宮灌流液、肝門脈・肝静脈血中LPS濃度、PGFM、TNF-α、LBPとの間には明らかな関係は認められず、亜急性ルーメンアシドーシスの予防効果の検証が難しいと考えられる。このことから今後の研究については、泌乳牛のルーメン内LPS濃度と繁殖機能との関連に重点を置いて研究を進める。まずは、LPS濃度の測定キットを別メーカーのものに変更し、泌乳牛のルーメン内LPS濃度と繁殖機能との関係の解析を行う。その後、乳量水準や濃厚飼料の給餌方法が異なる2牛群でのルーメン内LPS濃度の違いや繁殖機能との関連について解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた研究打ち合わせについては、別の用務と合わせて実施したため、旅費の支出を行わなかった。また、使用していたLPS測定キットの一時供給停止により購入ができなかったため次年度使用額が生じた。 次年度使用額の使用計画としては、実験に使用する消耗品の購入、研究打ち合わせのための旅費、論文投稿用の校閲料、投稿料用として使用する計画である。
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