本研究では鳥類、中でも家禽として最も飼育されているニワトリにおける下垂体のプロラクチン(PRL)細胞の分化機構について視床下部との関係から取り組んだものである。タンパク質分子レベルでの解析ではプラクチンの生理的放出因子である小腸血管作用ペプチド(VIP)による下垂体からのPRL放出と下垂体におけるPRL遺伝子発現効果を見た。また、発生胚後期における視床下部ペプチドと下垂体のPRLの遺伝子発現量変化をRNAseqによる解析を行なった。 タンパク質レベルの解析としてVIPのPRL放出効果は発生胚18日までは認められず、19日おいて初めて認められた。これまでに17日胚において下垂体にPRLが存在していることが示されているが、VIPによる分泌が18日までは誘導されないことからVIPの受容体がそもそも機能していないということが判明した。この分泌誘導実験の結果は遺伝子発現においても16日までのVIP受容体発現量は低いままであり、16日以降に増加することが示されたRNAseqの結果ともよく一致する。したがって、発生胚の18日から19日において認められる血漿中のPRL濃度上昇は視床下部におけるVIP合成の増加、下垂体におけるVIP受容体の発現量増加が強く関わっていることが示された。 一方でPRLは発生胚14日から20日にかけて発現量は600倍以上に増加することが示されたが、発生胚においては分泌と合成は別の機構で制御されている可能性が強く示され、視床下部ペプチドだけの制御ではない未解明の発現制御あるいはPRLの初期遺伝子活性化があることが示された。
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