研究実績の概要 |
我々は、これまでに大ヨークシャー種を基礎豚として、血液から測定できる免疫形質である白血球貪食能、補体代替経路活性、豚丹毒ワクチン接種後の抗体応答の3つの形質を指標とした6世代に渡る選抜を行い、高免疫能豚を造成している。本研究は、免疫能選抜により生じた遺伝的変化を解明し、豚抗病性の遺伝的改良に資することを目的として実施した。 高免疫能豚および基礎豚の血液からマクロファージを培養して、LPS刺激後の遺伝子発現の変化をマイクロアレイで解析したところ、RNASEL、SAMHD1、STAT3、TMEM150C及びTRIM21の5個の免疫系遺伝子において、豚群間で発現パターンに有意な差のあることが明らかとなった。また、次世代シーケンサーを用いて、これらの遺伝子のプロモーター領域の多型解析を行ったところ、それぞれの豚群に優勢なプロモーター型が存在することが明らかとなり、免疫能選抜により集団の遺伝的構成が変化したことが示唆された。さらに、免疫能選抜第3世代目の220頭のデータを用いて、プロモーター型と免疫形質との関連解析を行ったところ、RNASEL遺伝子の高免疫能豚型プロモーターに白血球貪食能を亢進させる効果があることが明らかとなった。 これらの研究成果について論文発表を行った(Shinkaiら, J. Vet. Med. Sci. 83:1407-1415, 2021)。本成果は、豚抗病性の遺伝的改良のためのDNAマーカー開発を通じて、養豚現場で問題となっている肺炎、下痢等の感染症による被害の軽減に繋がることが期待される。
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