本研究では、鶏培養骨格筋細胞を用いて、各種阻害剤を添加し、鶏骨格筋特異的なオートファジー系のタンパク質分解機構を明らかにすることを目的とした。また、ユビキチン-プロテアソーム系の遺伝子であるアトロジン-1の発現に対する影響についても比較検討した。鶏骨格筋細胞をオートファジーの阻害剤を添加して培養すると、オートファゴソーム形成の指標であるLC3-II/ LC3-I比は増加し、オートファジー系の遺伝子であるLC3B発現は減少した。一方、アトロジン-1の発現には差は見られなかった。次に、栄養センサーであり、オートファジーを制御しているmTORの阻害剤を添加して培養すると、LC3-II/ LC3-I比ならびにアトロジン-1の発現は増加したが、LC3Bの発現に差は見られなかった。オートファジー系の遺伝子ならびにアトロジン-1の発現を調節しているFOXO転写因子の阻害剤を添加して培養すると、LC3Bならびにアトロジン-1の発現は減少したが、LC3-II/ LC3-I比に差は見られなかった。プロテアソーム活性の阻害剤を添加して培養するとLC3Bならびにアトロジン-1の発現は減少したが、LC3-II/ LC3-I比に差は見られなかった。以上の結果から、鶏骨格筋において、オートファゴソームとリソソームの融合を阻害すると、オートファジー系の遺伝子発現は減少すること、mTORがオートファジーならびにユビキチン-プロテアソーム系の両方を制御していること、また、FOXOは、ユビキチン-プロテアソーム系とオートファジー系の遺伝子発現を調節しているが、オートファゴソーム形成に関与していないこと、さらに、プロテアソーム活性を阻害するとオートファジー系ならびにユビキチン-プロテアソーム系の遺伝子の発現が減少するが、オートファゴソーム形成には影響を及ぼさない可能性が示唆された。
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