研究課題/領域番号 |
17K08062
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
八代田 真人 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (30324289)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 放牧 / 精密畜産 / 採食行動 / バイオロギング |
研究実績の概要 |
放牧家畜の採食行動はバイト(放牧家畜が舌,上顎の歯床および下顎の切歯で植物を捕捉し,草地から引きちぎる行動)と呼ばれる細かな顎運動の連続によって構成されるため観察が難しく,技術的に定量が困難であった。本研究では,動物に装着可能な小型の9軸センサとウェアラブルカメラを用いて,摂食時における放牧家畜の動きを詳細に記録し,形態の異なる植物に対する放牧家畜のバイトの様式の特徴を抽出することを目的とした。 試験には6頭のヤギを供試した。形態(生育型)の異なる4種の植物種(叢生型:イタリアンライグラス,匍匐型:シロクローバー,ロゼット型:(ロゼット状の)ヒメジョオン,直立型:ヨモギ)をヤギに採食させ,このときの動物の頭部の動きを,頭部に固定した9軸センサ(加速度,角速度,地磁気)を用いて記録した。採食行動はビデオカメラとウェアラブルカメラでも撮影した。9軸センサの各軸の波長データから変動係数を求め,映像とマッチングさせ,採食時に認められる各軸の特徴的変化を抽出した。 9軸センサの加速度のデータでは,直立型のヨモギでは採食時に上下および左右方向の軸の変動係数が大きかった。叢生型のイタリアンライグラスを採食する際には上下方向軸の変動係数が大きくなった。一方,匍匐型のシロクローバーやロゼット型のヒメジョオンでは採食時にはいずれの軸でも変動係数は小さかった。角速度をみると,叢生型のイタリアンライグラスとロゼット型のヒメジョオンでは,前方回転を示す軸と水平面に対して円を描く軸で変動係数が大きく,さらにヒメジョオンでは横方向の回転軸の変動係数も大きな値を示した。直立型のヨモギでは角速度には目立った特徴がなく,匍匐型のシロクローバーではいずれの軸においても目立った特徴は確認できなかった。以上から,9軸センサを使うことで各植物種のバイト様式の特徴を抽出可能なことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
9軸センサとウェアラブルカメラを用いて放牧ヤギの採食行動を記録し,そのセンサの波形とビデオ映像による解析から,形態の異なる植物に対するバイト様式には違いがあり,植物ごとのバイト様式の特徴を抽出可能なことが明らかになった。しかしながら,機械学習を用いたバイト様式の判別については,まだ分析・検証中で完了していない。このため,当初の予定に比べ進捗状況に若干の遅れがある。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の結果から,9軸センサを使うことで各植物種のバイト様式の特徴を抽出可能なことが示唆された。平成30年度においては,まずこの9軸センサのデータを用いて,機械学習(決定木分析など)により,バイト様式の判別を行い,その推定精度を検証する。次いで,形態(生育型)の異なる4-6種の植物種を生育させた放牧地にヤギを放牧し,9軸センサとウェアラブルカメラにより採食行動(バイト様式)を記録するとともに訓練された観察者が,対象動物のバイト様式とそのバイト様式によるバイト回数を直接観察により記録する。前年度に作成した判別アルゴリズムに基づき,バイト様式とそれによるバイトの回数および順序を推定し,直接観察の結果と比較検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定であった9軸加速度センサーのモデル変更に伴い,センサー1台当たりの価格が値上がりした。このため,センサーの購入台数を減らしたことにより残額が生じた。一方で,試験の実施に当たり,消耗品が当初予定以上に必要となったため,センサーの購入で生じた残額を充てた。結果的に2,150円程度の残額が生じた。 この残額は,次年度の物品費として消耗品の購入に充てる予定である。
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