最終年度は、これまでに引き続き6県(島根県、愛媛県、和歌山県、山口県、香川県及び大分県)の畜産試験場の協力を得て、行動反応試験を行うとともに、気質質問調査を行った。これらによって当初計画での総計200頭分の血液行動反応試験および質問調査ならびに血液データを得ることができた。遺伝子多型解析については、新規個体も含め脱共役タンパク質(UCP)および神経ペプチドY(NPY)の一塩基多型について解析した。UCPについては、変異型ホモ個体が耐暑性および抗病性ともにスコアが低いことが示された。NPYでも、同様に変異型ホモ個体が耐暑性および抗病性ともにスコアが低い傾向にあった。「従順さ」については、いずれの遺伝子に関しても違いは認められなかった。以上の結果から、牛の特性と代謝調節遺伝子多型との間に関係のあること、気質と遺伝子変異との関係については、当初予想されたストレス関連遺伝子よりも代謝関連遺伝子の影響が大きいことが明らかとなった。期間全体を通して、ウシの気質を評価に際して、本試験で構築した質問調査票および行動試験が有効であること明らかとなり、気質を指標とした選抜において参考となるものと考えられた。気質と遺伝子変異との関係については、当初予想されたストレス関連遺伝子よりも代謝関連遺伝子の影響が大きいことが明らかとなったものの、一方で飼育管理によって「扱いやすさ」は改善できる可能性も考えられ、遺伝型を考慮した上で群管理行うことも必要であろう。これらの知見は今後の育種選抜の参考になること、生産現場において日頃の家畜との接し方を再考する契機になるものと期待される。
|