研究課題
補体因子はプリオン感染マウスの脳で感染初期から発現が増加するが、病態形成における補体因子の機能は不明であった。補体因子はプリオン感染初代培養神経細胞の細胞膜の透過性を亢進させ、異常型プリオンタンパク質 (PrPSc)を減少させることから、補体因子がプリオン感染神経細胞に何らかのシグナル伝達を誘導する可能性が考えられた。また、アルツハイマー病モデルマウスでは、補体因子C1qはミクログリアによるアミロイドβの貪食を亢進すること、アストロサイトのNFκB経路を活性化することから、補体因子はプリオン病でも神経細胞・グリア細胞間のクロストークを担う伝達物質として機能する可能性が考えられた。H29およびH30年度の結果より、補体因子はプリオン神経細胞の細胞膜の透過性を亢進させ、異常型プリオンタンパク質 (PrPSc)を減少させること、アストロサイトを活性化させることが初代培養神経細胞とin vivoで示唆されており、補体因子がプリオン病において神経細胞・グリア細胞のクロストークを制御している可能性が考えられた。H31 (R1) 年度は、神経細胞、アストロサイトでC1qにより誘導される細胞シグナル経路を解析した。プリオン感染神経細胞・アストロサイト混合培養系にC1qを作用させたときに亢進する神経細胞の細胞膜透過性は、p38MAPK経路阻害剤により抑制された。また、同培養系にC1qを作用させたときに亢進するアストロサイトの活性化は、STAT3阻害剤により抑制された。プリオン感染神経細胞・アストロサイト混合培養系にC1qを作用させると、神経細胞においてp38の核移行が観察され、アストロサイトではSTAT3の核移行が観察された。以上の結果から、補体因子はプリオン感染神経細胞・アストロサイトにシグナル伝達を誘導することが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
PLOS ONE
巻: 14 ページ: e0217944
10.1371/journal.pone.0217944
臨床免疫・アレルギー科
巻: 72 (6) ページ: 683-690