研究課題
本研究全体の目的は、1)体系的な研究が行われていない子牛の周産期脳障害に焦点を当て、病理像をその病理発生機序とともに明らかにすること、2)「小脳皮質変性症」や「明瞭な形態変化を伴わない神経疾患」のような、同様の病理像を呈する未解明疾患の病理発生機序を解析すること、および3)日常の症例収集の中から、新たな病態を探索し、その病理像と病理発生機序を明らかにすることであった。H31年(令和元年)度は、「明瞭な形態変化を伴わない神経疾患」症例10例に対して、ウシでの神経傷害マーカーとしての有用性が示されたFluoro Jade C (FJC) 染色を行ったところ、一部の症例で FJC 陽性細胞が認められた。また、「小脳皮質変性症」新規症例の凍結材料を用いて、DNA マイクロアレイ解析を行った。しかしながら、症例が1例のみであったためか、パラフィン切片を用いて実施した解析結果と共通する有用な結果が得られなかった。小脳皮質変性症病変についても、周産期脳障害の神経細胞傷害マーカーとしての有用性が確認された FJC の有用性について検討した結果、疾患症例のプルキンエ細胞で陽性所見を得ることができ、FJC が小脳皮質変性症の診断にも有用であることを確認した。一方で、対照として用いた、正常な若齢牛の一部の小脳のプルキンエ細胞で、FJC弱陽性を認めた。正常な成牛のプルキンエ細胞では弱陽性所見を認めなかったことから、若齢牛の小脳でFJC 染色性を解釈する際には、軸索腫大の存在の有無、グリオーシスなどの、その他の所見と合わせて総合的に判断する必要があることが示された。また、同時にFJCの他の動物種への有用性も併せて検討し、これまでに応用報告のない、ネコ、イヌ、ヒツジ、およびヤギの神経細胞傷害にも FJC が有用であることを確認した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件)
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