研究課題/領域番号 |
17K08074
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上間 亜希子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (20630156)
|
研究分担者 |
堀本 泰介 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (00222282)
村上 晋 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (10636757)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 改変型AKAV / 転写プロモーター活性の増強 |
研究実績の概要 |
本研究目的は、外来遺伝子高発現オルソブニヤウイルス作出技術の確立である。外来遺伝子として容易に検出できるGFPを用いて、これを効果的に発現するアカバネウイルス(AKAV)の作出を試みる。 これまでに、蛍光発現AKAV(eGFP-AKAV)のS分節5′ UTRの3′側領域をstop signalまで削ったウイルス(eGFP-AKAV/42)が作製されており、このウイルスは、培養細胞でeGFP-AKAVよりも蛍光発現時期が早いことが確認できている。今年度は新たに、eGFP-AKAV/42のS分節からさらに1塩基ずつ削っていった9種類の5′ UTR 欠損S分節プラスミドを作製した。これら各プラスミドとLおよびM RNA発現プラスミドをT7ポリメラーゼ恒常発現BHK-T7/9細胞に遺伝子導入することで、8種類のウイルスが回収できた。回収できたウイルスのRNAを抽出しシーケンス解析で塩基配列を確認したところ、欠損領域の多い4種類のウイルスでS分節に変異が入っていた。変異の入っていなかった4種類のウイルスはそれぞれ、5′ UTRのうち80~83塩基を欠損させたものであり、感染性ウイルスの産生に必須である5′ UTR領域を突き止めることができた。 作製した蛍光AKAVは全て、CPE発現の前に蛍光を検出できており、改変前のeGFP-AKAVよりも蛍光発現時期が早かった。5′ UTRを欠損させたことで、アンチゲノムからの転写プロモーター活性が増強し、GFP遺伝子の発現が上昇した可能性がある。これまでに、同じオルソブニヤウイルスのブニヤンベラウイルス(BUNV)で、S分節の5′ UTRを削ると転写・複製効率が下がるというミニゲノムアッセイの報告があるが、本研究結果から感染性ウイルスでは異なることが示唆された。これはオルソブニヤウイルスのUTRに関する新たな知見である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の計画は、eGFP-AKAVの5′ UTR 欠損S分節プラスミドライブラリーを作製し、5′ UTR欠損AKAVライブラリーを作製することであった。 eGFP-AKAVのS分節5′ UTR を79塩基欠損させて作出した、eGFP-AKAV/42のS分節をもとに、さらに1塩基ずつ欠損させた9種類の5′ UTR 欠損S分節プラスミドを作製した。これらを用いてウイルスレスキューを試みたところ、変異の入っていない4種類のウイルスが回収できた。これらのウイルスはそれぞれ、5′ UTRのうち80から83塩基を欠損したもので、感染細胞で蛍光が検出できている。また感染細胞の観察で、従来の蛍光AKAVよりも蛍光発現時期が早いことが確認できている。以上より、本研究は当初の計画通りに順調に進捗している。
|
今後の研究の推進方策 |
作出したウイルスについて、in vitroおよびin vivoの詳細な解析を行っていくことで、蛍光を最も効果的に発現するウイルスを見つける。 平成30年度は、作出したウイルスのin vitroでの性状を解析する。5′ UTR欠損部位の多い組換えAKAVを用いて、eGFP-AKAV/42および改変前のeGFP-AKAVと以下の項目について比較する。1. 増殖性:感染細胞での力価測定、増殖曲線、プラックの大きさを調べる。2. 蛍光発現時期の解析:感染24時間後および48時間後の蛍光領域を比較する。また、蛍光免疫染色でAKAV感染領域での蛍光発現率を調べる。3. 安定性:作出ウイルスを10代まで継代し、蛍光検出できたプラック率を継代数ごとに比較して、挿入遺伝子が安定して発現しているかを調べる。4. また蛍光発現時期の違いについて、その原因解明のために、培養細胞でのゲノムの転写・翻訳能をノーザンブロッティングで調べる。 in vitro性状解析が終わり次第、in vivoでの性状解析を行う(平成31年度予定)。蛍光を最も効果的に発現するウイルスをマウスに感染させ、eGFP-AKAVとの病原性を比較する。新生子マウスに腹腔内接種し、一日一回以上症状と生死を観察し、生存曲線を描く。マウスに致死性を示した場合、瀕死期の臓器(腹腔内臓器、胸腔内臓器、脊髄、脳など)を蛍光実体顕微鏡で観察し、蛍光検出を試みる。致死性を示さない場合でも、感染後、継時的に解剖し、同じく蛍光実体顕微鏡で蛍光検出を試みる。
|