研究課題
本研究では、神経伝達物質の一つであるアセチルコリン(ACh)の作用を仲介するM2ムスカリン受容体サブタイプが、体液調節に重要な役割を果すバゾプレシン(AVP)の合成や分泌調節に果たす新たな制御機構を解明する目的で、同サブタイプ欠損マウスを用いてAVPの分泌調節機構を検討した。今年度は、AVPの合成・分泌を促進性に制御する神経支配機構、M2サブタイプによるアルドステロンおよびオキシトシンの分泌調節機構の解明に焦点を当てて研究を進め、以下の成果が得られた。①AVP抗体とM2受容体抗体による二重染色、あるいはGABA抗体とM2受容体抗体による二重染色を実施した結果、GABA作動性神経とコリン作動性神経が直接シナプスを形成してAVPの合成および分泌を調節しているのではなく、介在神経を介して間接的な神経支配によりAVPの合成・分泌調節に関わっていることが示唆された。②M2-KOマウスにおける血漿アルドステロン濃度を測定し、野生型と比較した結果、欠損型と野生型でアルドステロンを分泌する副腎皮質について形態・機能的な差異は認められなかったものの、欠損型ではアルドステロン濃度が有意に低下しており、アルドステロンの分泌調節にもM2サブタイプが関与していることが示唆された。③M2-KOマウスの脳切片において抗オキシトシン抗体を用いた免疫染色を行い、視床下部視索上核および室傍核における陽性細胞を計測し、野生型と比較した結果、室傍核におけるオキシトシン陽性細胞の数は両者で差が認められなかったものの、視索上核ではM2-KOマウスで有意に減少していた。この結果は、M2サブタイプが視床下部室傍核においてAVPとオキシトシンの両者について合成・分泌を促進性に調節していることを示唆している。これらの成果の一部は、日本薬理学会(2020年3月、横浜)にて発表した。また、現在論文投稿の準備を進めている。
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American Journal of Physiology Cell Physiology
巻: 318 ページ: C514-C523
10.1152/ajpcell.00277.2019.