研究課題/領域番号 |
17K08077
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
守村 敏史 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 助教 (20333338)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ALS / TDP-43 / 小胞体ストレス / オートファジー / ユビキチン |
研究実績の概要 |
孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病巣部では、核蛋白質であるTAR DNA binding protein of 43KDa (TDP-43) が核から消失し細胞質内で凝集する事が報告され、TDP-43の機能低下が孤発性ALSの発症要因の一つである事が強く示唆されて来た。私はこれまでに、ALS病態における細胞内メタボリズムとりわけ小胞体環境やオートファジーの変化に着目し、TDP-43により発現制御を受ける遺伝子TDP-43 regulated gene(TRG、仮称)を同定し、ALS発症における分子学的位置づけの解明を進めてきた。平成29年度は、当初の計画通り、1)培養細胞並びにマウス胎仔大脳皮質における野生型及び変異型TRGの強制発現及びそれに伴う表現型の解析、2)新規TRG結合蛋白質の解明、以上2点の研究を中心に解析を進めた。この内、一過性にTRG遺伝子を強制発現させた細胞を用いた生化学的解析から、TRG蛋白質は、TDP-43によりその遺伝子発現が制御されるのみならず、TDP-43そのもの、とりわけ分子内システインブリッジ形成に必須なシステイン残基をセリンに置換しmisfoldingを誘導したengineered misfolded TDP-43 (emTDP-43)に非常に強く会合する事を見いだした。また、emTDP-43によるALS様封入体をHEK293A細胞で再構築し、内在性TRG蛋白質の局在を調べた結果、TRGはemTDP-43陽性凝集体と共局在し、凝集体の一部として存在する事を明らかにした。更に、ALS病巣ではTDP-43が限定分解を受け、そのC末断片が強い病原性を発揮する事が示唆されているが、TRGはこのC末断片とも強く結合する事を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の報書計画通り、新規TRG結合蛋白質の同定や強制発現に伴う表現型の解析が進んでいる事から、昨年度の進捗は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
TRGはTDP-43による発現制御を受けるにとどまらず、正常な構造を大きく逸脱したemTDP-43や野生型TDP-43の病原性に関わるC末断片に選択的結合する事から、孤発性ALSの病態に大きく関与する事が強く推測された。今後は家族性ALSとの関連性にも着目し、家族性ALSの原因となるTDP-43の変異体や、Superoxide dismutase 1 、Fused in Sarcome 等その他の家族性ALSの原因遺伝子産との関連についても培養細胞を用いた研究を進めつつ、ALS患者標本のTRGの発現を免疫組織染色により解明する予定である。それに加えて、当初の計画に記した通り、TDP-43によるTRG遺伝子発現制御の分子機構の解析並びにTRG遺伝子発現安定化因子の検索を進める事により、TRGを標的としたALSの治療法に関わる研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に予定していた学会発表を取りやめた為、8万円程の未使用額が生じた。新年度の研究の方向性から、試薬・消耗品の増加や研究関連機器の購入が見込まれる事から、繰り越した8万円はこれら研究関連の物品費に全額使用する予定である。
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