研究課題/領域番号 |
17K08081
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
谷口 喬子 (岩田喬子) 宮崎大学, 産業動物防疫リサーチセンター, 助教 (50500097)
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研究分担者 |
三澤 尚明 宮崎大学, 産業動物防疫リサーチセンター, 教授 (20229678)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Helicobacter cinaedi / T6SS / ヒト腸管上皮細胞 / 付着・侵入能 |
研究実績の概要 |
ヒト由来のH. cinaediは、VI型分泌機構(T6SS)関連遺伝子を保有することがゲノム解析で明らかになったが、イヌ、ハムスター由来株においては不確定であった。H. cinaediの全ゲノムシークエンスからT6SSに関連していると考えられるCDSは13個存在し、そのCDSは3つに分かれて位置している。そこで、これらのCDSの中から、Hcp (expelled tube)、TssG (baseplate)、TssL (membrane complex)遺伝子を選択し、これらを検出するためのプライマーを設計した。このプライマーを用いて、イヌ由来株(13株)、ハムスター由来株(11株)の各遺伝子の保有状況を調べたところ、すべてのイヌ由来株と6株のハムスター由来株からはこれら遺伝子が検出されず、5株のハムスター由来株からHcp、TssL遺伝子のみが検出された。イヌ由来株およびハムスター由来株では、ヒト由来株と同様のT6SS関連遺伝子を保有していないことが示唆された。 またT6SS関連遺伝子の有無の違いによる病原性の比較を行うため、ヒト腸管上皮細胞に対する付着・侵入能を調べた。菌株として、T6SS関連遺伝子を保有するヒト由来株(N23)、保有しないイヌ由来株(T22)およびハムスター由来株(T34)を使用した。付着試験は、ヒト結腸癌由来上皮細胞;CaCo-2に接種後、付着したH. cinaediを希釈培養法により計測することによって行った。侵入試験は、付着したH. cinaediをゲンタマイシン処理し、細胞侵入した菌のみを計測した。その結果、T6SS関連遺伝子を保有するヒト由来株が、保有しないイヌおよびハムスター由来株に比べ、高い付着・侵入能を保持していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
T6SSがH. cinaediの病原性にどのように関連しているのかを明らかにするため、T6SS関連遺伝子の欠損株を作製し、欠損株と野生株の病原性の比較を計画していたが、まだ欠損株が作製できていない。発現ベクターを5種類ほど試してみたが、H. cinaediへのエレクトロポーレーションによる形質転換が困難であることが分かった。今後はNatural transformationによる形質転換を検討している。欠損株の作製が遅れているため、T6SS関連遺伝子を保有するヒト由来株、保有しないイヌ由来株およびハムスター由来株について、ヒト腸管上皮細胞に対する付着・侵入能を調べた。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト由来株を用いて、T6SS関連遺伝子の欠損株を作成し、欠損株と野生株の病原性を比較し、T6SSがH. cinaediの病原性にどのように関連しているのかを明らかにする。T6SSに関連していると考えられる13個のCDSから、Hcp、TssG、TssL遺伝子をPCRで増幅し、大腸菌Tベクターにクローニング後、大腸菌に形質転換させる。増幅させたプラスミド内のユニークサイトに、カナマイシンあるいはクロラムフェニコール耐性遺伝子を挿入し、再度大腸菌で増幅させる。薬剤耐性遺伝子挿入プラスミドの抽出後、エレクトロポーレーションによってH. cinaediに形質転換させ、標的遺伝子の欠損株を得る。エレクトロポーレーションによる形質転換が困難な場合は、Natural transformationも検討する。T6SSに関連していると考えられる13個のCDSから、Hcp、TssG、TssLをターゲットとしているが、T6SS欠損株が作製できない場合は、残りの10遺伝子のノックアウトミュータントを作製する。欠損株が得られたら、ヒト腸管上皮細胞に対する付着・侵入能を調べ、野性株と比較する。さらに共焦点レーザー顕微鏡、リアルタイム3D解析ソフトと用いて、細胞内侵入を三次元画像で確認する。
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