研究課題/領域番号 |
17K08082
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
吉田 彩子 宮崎大学, 農学部, 准教授 (20343486)
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研究分担者 |
長安 英治 宮崎大学, 医学部, 助教 (20524193)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ニホンジカ / ウエステルマン肺吸虫 / 抗体検査 / サワガニ |
研究実績の概要 |
ウェステルマン肺吸虫症は典型的な人獣共通の食品由来寄生虫症である。近年、ニホンジカもウェステルマン肺吸虫の待機宿主として、ヒトへの感染源となり得ることが報告された。そこで、シカ肉からの肺吸虫感染リスクの評価を目的に、ニホンジカの抗肺吸虫抗体保有状況および抗体陽性シカ捕獲地周辺における肺吸虫の分布を調査した。 宮崎大学で肺吸虫症と診断された患者のうち、シカ肉からの感染が強く疑われた症例の発生地域で、2013年2月から2018年6月に捕獲されたニホンジカの血清合計988検体について、抗肺吸虫特異抗体を吸収処理ELISAにより検出した。各地域での抗体陽性率は、岐阜県3.8%(8/212頭)、京都府1.6%(1/62頭)、兵庫県0.7%(1/150頭)、大分県0%(0/135頭)、宮崎県1.6%(4/250頭)、熊本県5.1%(4/79頭)、鹿児島県2.0%(2/100頭)であった。また、シカ肉の喫食によるとみられる症例の発生がない岡山県のシカ血液検体99検体についても検討を行ったが、抗肺吸虫抗体陽性の個体は認められなかった。 以上の地域のうち、兵庫県、宮崎県、熊本県で抗体陽性シカ捕獲地周辺におけるサワガニの肺吸虫感染状況を調査し、得られたメタセルカリアの分子生物学的種同定を行った。その結果、兵庫県ではサワガニ71匹中11匹(13.9%)が肺吸虫のメタセルカリア陽性で、採取されたメタセルカリア28隻は全てがウェステルマン肺吸虫(2倍体)だったのに対し、宮崎県ではサワガニ102匹中45匹(44.1%)が肺吸虫のメタセルカリア陽性であったものの、採取されたメタセルカリア70隻は全てが宮崎肺吸虫であった。また、熊本県で採取したサワガニは28匹全例が肺吸虫陰性であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、1府7県についてはすでにニホンジカの抗肺吸虫抗体保有状況調査を完了した。現在、5県においてシカの血液サンプルを採取中である。また、抗体陽性シカの確認された岐阜、兵庫、宮崎、熊本、鹿児島5県で第2中間宿主であるサワガニの感染状況調査を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
他の西日本地域の府県についてニホンジカの血液サンプルを収集し、抗体検査を行う。サンプル採取の協力が得られにくい地域については、他機関の研究者に過去に採取したサンプルの分与をあたり、出来るだけ広い地域をカバーした調査を目指す。豚コレラの発生のみられる岐阜県の近隣県では狩猟行為自体を自粛しているためサンプル採取が困難な状況にあるが、状況を見ながらサンプリングを試みる。 平成29・30年度に、抗肺吸虫抗体陽性ニホンジカが確認された地域については、淡水性カニにおける肺吸虫のメタセルカリア寄生状況を調べ、感染率の違いを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
岐阜県の豚コレラの流行により、当該年度におけるこの地域でのサンプリングを自粛し次年度に持ち越したため、旅費が当初の予定より減額した。
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