抗ウイルス自然免疫に重要なウイルスセンサー蛋白質・RIG-Iは、ウイルスRNAを捕捉するにあたりストレス顆粒(Stress granule)とよばれる構造に集積することで、ウイルスセンサーとして機能することが明らかとなり、注目されている。我々は、狂犬病ウイルス弱毒株(Ni-CE株)感染細胞ではSGが形成され自然免疫応答が発動するのに対し、強毒株(西ヶ原株)感染細胞ではストレス顆粒がほとんど形成されないことから、狂犬病ウイルスの病原性発現機構の一つとして「ストレス顆粒形成の回避・抑制」を想定し、検証を進めている。今年度は、1.由来の異なる細胞にそれぞれの狂犬病ウイルス株が感染した場合のストレス顆粒形成についての検証、2.Ni-CE株感染によって誘導されるストレス顆粒へのRIG-I蓄積の検証、3.キメラウイルスの作成、の3項目を実施した。 1.ヒト神経系由来SYM-I細胞および、ヒト腎由来293T細胞へ西ヶ原株およびNi-CE株を感染させ、固定・蛍光抗体による染色を行うことでストレス顆粒の形成を検証した。その結果、両細胞株ともにNi-CE株がストレス顆粒形成を誘導したのに対し、西ヶ原株は誘導しなかった。すなわち、本事象は細胞の種類によらないことが示唆された。 2.Ni-CE株感染SYM-I細胞を、ウイルス抗原、ストレス顆粒マーカー分子(G3BP)およびRIG-Iに対する抗体で3重染色した結果、.Ni-CE株感染によって形成されるストレス顆粒にRIG-Iが蓄積される像が観察された。 3.どの遺伝子がストレス顆粒抑制に関わるか明らかにするため、西ヶ原株の遺伝子を一つずつNi-CE株のものに置換したキメラウイルスを作出した。M遺伝子がNi-CE株のもののみ、感染細胞にストレス顆粒を形成した。
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