研究課題/領域番号 |
17K08084
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
井澤 武史 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (20580369)
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研究分担者 |
竹中 重雄 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学研究科, 教授 (10280067)
桑村 充 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (20244668)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 慢性肝疾患 / 肝硬変 / 鉄過剰 |
研究実績の概要 |
慢性肝疾患における鉄過剰の病態修飾メカニズムを調べるために,F344ラットに肝毒性物質であるチオアセトアミド(TAA)を最長20週間反復腹腔内投与(100 mg/kg BW,週2回)し,肝線維化から肝硬変への進展を経時的に解析可能な肝硬変モデルを作製した.このモデルに鉄過剰食(1% Fe)または正常食(0.02% Fe)を不断給餌し,肝硬変の発現・進展に及ぼす鉄過剰の影響を解析した.TAA+正常食群では,実験開始後20週において高度な線維化を示す肝硬変がみられたが,TAA+鉄過剰食群では線維化が著しく抑制され,肝硬変の発現は認められなかった.TAA+正常食群と比較して,TAA+鉄過剰食群では血清鉄が約3倍,肝臓鉄が約8倍に上昇し,明らかな鉄過剰状態が誘発されていた.肝臓中マロンジアルデヒドは,TAA+正常食群と比較して,TAA+鉄過剰食群で約4倍上昇し,肝硬変の著しい抑制に反して脂質過酸化レベルが上昇していることが示された.TAAの肝毒性発現に関わる薬物代謝酵素(CYP2E1, FMO3)の肝発現量は,両群間で差はみられなかった.TAA+正常食群と比較して,TAA+鉄過剰食群ではTUNEL陽性肝細胞が減少し,カスパーゼ-3の開裂が減少していた.一方で,アポトーシスの初期分子であるBaxの肝発現量が増加していた.以上より,食餌性鉄過剰は化学物質誘発性肝硬変を顕著に抑制し,そのメカニズムにはアポトーシスの抑制が関わる可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画である,慢性肝疾患における鉄過剰の病態抑制メカニズムの一端が明らかとなり,研究は順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
代謝性肝疾患モデルを用いた解析を進め,今年度までに得られたデータと比較検討することで,鉄過剰の病態修飾メカニズムをさらに追求する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は肝硬変モデルの解析に注力したため,当初実施予定であった一部の実験(代謝性肝疾患モデルの解析)を次年度に繰り越すこととなった.そのため,次年度使用学が生じた.
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