昨年度までに,肝鉄過剰を呈するラットでは,チオアセトアミド投与による小葉中心性肝傷害が軽減する一方で,アリルアルコール投与による小葉辺縁性肝傷害が増悪することが示されている.この病態修飾の違いを追求するために,鉄過剰肝と正常肝で薬物代謝酵素の発現を解析したところ,鉄過剰肝ではチオアセトアミドの毒性発現に関わる代謝酵素(CYP2E1やFMO3)の発現低下が認められ,アリルアルコールの毒性発現に関わる代謝酵素(ADH)の発現上昇が認められた.また,トランスクリプトーム解析により,鉄過剰肝において,第I相酵素(Cyp1a1やAdh1など12種が上昇;Cyp2d4など12種が低下),第II相酵素(Gsta3など4種が上昇;Ugt2a3など4種が低下)および薬物トランスポーター(Abcg2など3種が上昇;Slco3a1など7種が低下)の遺伝子発現が変動することが示された.よって,肝鉄過剰による化合物誘発肝傷害の病態修飾には,薬物代謝酵素の変動が関わる可能性を示した.
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