最終年度は計画を一部変更し、犬角膜実質細胞の分離・培養し、その性状解析を行った。犬角膜を酵素処理して得られた細胞を血清含有培地にて培養したところ、線維芽細胞様細胞が得られた。一方、この細胞を無血清培地にて培養したところ、神経堤細胞由来細胞の特徴を持つ形態を示す細胞がえられた。いずれの細胞においても、実質細胞マーカーであるALDH3A1発現を認めたが、血清含有培地でのみαSMA発現をみとめ、犬角膜実質細胞から活性型角膜実質細胞への分化を示したと考えられた。さらに、この細胞にTGF-βを添加すると、αSMA発現が上昇し、筋線維芽細胞への分化を示したことから、角膜混濁時における角膜実質細胞からの筋線維芽細胞をin vitroで再現する病態モデルに利用できると期待できた。そこで、角膜実質混濁の治療薬として期待されている肝細胞成長因子(猫リコンビナント肝細胞成長因子;frHGF)をTGF-βと共に添加したところ、αSMA発現を有意に抑制したことから、犬角膜混濁の治療薬として応用できる可能性が示された。さらに、TGF-β刺激による筋線維芽細胞分化後にfrHGFを添加したところ、α-SMA発現の有意な抑制がみられたことから、frHGFは角膜損傷後に実質細胞から分化して産生される筋線維芽細胞の増殖や生存に何らかの影響を与える可能性が示唆された。 一方、人工角膜作製においては、犬角膜内皮細胞の培養が困難であったことから、ウサギでの作製に変更して継続している。新たに作製した鋳型をウサギ皮下に埋め込んだところ、犬と比較し、バイオシートの合成が遅いことが明らかになり、埋没期間を延長して再度ウサギバイオシートの作製を行っている。
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