平成29年度については、北海道、青森、東京、山梨、大分の動物病院の協力を得て、臨床研究の立ち上げとプレ臨床研究を行った。国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)の策定した慢性腎不全のステージ分類に則り、ステージ2以上の自然発症の腎不全の猫を各病院より推薦いただいた。その候補猫に対し、さらなる情報収集(既往例、合併症、現在までの腎不全の状態の推移と治療内容)を行い、併せて担当獣医師による詳細な健康診断と血液検査を実施した。その上で、研究対象と考えられた猫の飼い主に対し、AIM臨床研究参加への提案を行った。結果として、提案したほとんどの飼い主が臨床研究参加を希望され、約9か月に及ぶ臨床研究に参加していただいた。経過観察として、18回の測定ポイント(採血)を設定し、血液生化学検査、炎症マーカー測定、尿毒素等を測定した。また、研究期間中、飼い主の協力を得て、健康状態管理シートを自宅でつけていただき、約90日間の食欲、活動性、快適性などの変化を詳細に記録した。結果として、血液生化学検査におけるBUN、クレアチニン、SDMAが変化をとらえるマーカーとして有効であることが再認識され、中には、血中尿毒素の変化を顕著に示す猫もいた。炎症マーカーとして測定した猫血清アミロイド(SAA)とα1-AGの動きも大変興味深い結果を示し、以降の研究において継続測定していく予定である。AIMの血中動態の変化においては、その濃度と投与効果との関連性について、更に母数を集め、継続して検証していく予定である。
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