研究課題/領域番号 |
17K08099
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
大森 啓太郎 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (20466915)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 慢性腸症 / 犬 / ハウスダストマイト / 消化管 |
研究実績の概要 |
研究初年度は、家庭の床やカーペットに存在する主要なアレルゲンの1つであるハウスダストマイトが、犬の消化管内に存在するか否かを評価した。本研究では、大学において飼育している健常犬、家庭で飼育されている健常犬、および慢性腸症(抗菌薬反応性腸症、食事反応性腸症、炎症性腸疾患)と診断した犬から、内視鏡下で胃液および十二指腸液を採取し、用手法により直腸から糞便を直接採取した(環境から糞便中へのハウスダストマイトのコンタミネーションを極力さけるため)。これらのサンプルにおいて、ハウスダストマイトの主要アレルゲンの1つでありプロテアーゼ活性を有するDer p1濃度を市販のELISAキットを用いて測定した。その結果、市販のELISAキットの感度では、各サンプル中のDer p1濃度を測定することができなかった。そこで、Der p1に対する異なる抗体を用いて高感度ELISA測定系を新たに構築し、各サンプルにおけるDer p1濃度を測定したところ、健常犬および慢性腸症の犬の胃液、十二指腸液および糞便においてDer p1が検出された。一方、健常犬と慢性腸症の犬の各サンプルにおいて、Der p1濃度に差は検出されなかった。これらの結果から、犬の消化管内にはハウスダストマイトが存在することが明らかになった。また、健常犬と慢性腸症の犬の消化管内ハウスダストマイト濃度に差が検出されなかったことから、慢性腸症の犬の消化管内では、ハウスダストマイトに対する受容体の数や反応性が健常犬とは異なる可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、犬の消化管内におけるHDMを検出することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
犬の消化管内にハウスダストマイトが存在することが明らかとなったことから、ハウスダストマイトが犬の腸上皮バリア機能を減弱させるメカニズムと慢性腸症の病態において果たす役割を解明する。次年度は、犬の腸管粘膜を用いたex vivo試験により、腸上皮バリアを構成するタイトジャンクションに対するハウスダストマイトの作用および腸上皮細胞由来炎症性サイトカインに対するハウスダストマイトの作用を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた旅費および人件費を使用しなかったこと、および物品費(消耗品費)が予定していた金額より下回ったため次年度使用額が生じた。次年度は、今年度使用しなかった旅費および人件費を使用予定であること、またサンプル数を増やして消化管内ハウスダストマイト濃度を解析予定であることから、今年度分の物品費を次年度分と合わせて使用する予定である。
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