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2018 年度 実施状況報告書

新たなワクモ制御技術の確立-実用化への新展開-

研究課題

研究課題/領域番号 17K08104
研究機関鳥取大学

研究代表者

山口 剛士  鳥取大学, 農学部, 教授 (70210367)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード鶏病 / ワクモ / Dermanyssus / ワクチン / 薬剤抵抗性
研究実績の概要

ワクモのワクチン候補として、節足動物の中腸に分布し消化等に重要なperitrophic matrix protein(PMP)、およびセリンプロテアーゼ阻害を主な機能とし宿主血液の凝固抑制等に重要なserpinに着目し、ワクモのPMP様6遺伝子とserpin様5遺伝子を同定した。このうちPMP様2遺伝子(DgCBP1および2)およびserpin様1遺伝子(DgSp1)をクローン化し大腸菌で発現、マウスに免疫し抗血清を作出、ワクモの免疫染色に供した。同様にニワトリにも免疫し、抗血清を含む血液をワクモに吸血させワクチン効果の評価を行った。免疫染色で、DgCBP1および2は中腸上皮細胞、管腔側表面および管腔内に認められた。また、DgCBP2免疫ニワトリ3羽中1羽の血液を給与したワクモ群に生存率の有意な低下が認められ、ワクチンとしての可能性が示唆された。一方、同一抗原を免疫した他のニワトリ由来血液を給与したワクモ群に生存率の低下は認められずワクチン効果の確認には至らなかった。DgSp1は、免疫染色で成ダニ雌中腸の上皮細胞および管腔内容とシンガングリオンに分布した。免疫鶏の血液を給与したワクモ群に有意な生存率の低下は認められず、ワクチン効果の確認には至らなかった。この他、水分子の吸収に重要な役割を担うアクアポリン様分子の遺伝子を同定し、推定アミノ酸配列から一部ペプチドを合成、ウサギに免疫し抗血清を作出した。
薬剤抵抗性の分子機構解析では、キチン合成阻害活性を持つ市販の昆虫成長制御剤に対する抵抗性化の分子機序解明に着手した。近年ナミハダニで報告された本剤の標的分子であるCHS1のオルソログをワクモで同定し、抵抗性化に関与する変異解明のため当該遺伝子の塩基配列解析に着手した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

ワクモにおける薬剤抵抗性の遺伝子診断技術確立では、ピレスロイド系薬剤の標的分子であるNaチャネル遺伝子に認められた抵抗性および感受性ワクモに特異的な塩基配列の検出を試みた。しかし、当初期待したいずれの方法でも信頼性の高い1塩基多型の検出には至らなかった。Naチャネル遺伝子は、抵抗性および感受性特異的塩基の周辺に抵抗生とは無関係な変異が散在しており、このことが多型の特異的検出を困難にする要因の一つと考えられた。有機リン系薬剤については、標的分子であるコリンエステラーゼ遺伝子全領域の塩基配列を解読、抵抗性および感受性ワクモに特異的な塩基配列の存在を明らかにした。また、昆虫成長制御剤の標的分子であるキチン合成酵素を対象に抵抗性に関与する変異の解析を進めている。また、薬剤感受性に重要な代謝酵素であるGlutathione S-transferase(GST) およびシトクロムP450遺伝子に特徴的な機能ドメインを持つワクモのGSTおよびP450様分子を、それぞれ12および 35同定した。
ワクチンについては、候補となる3分子をクローン化し大腸菌で発現、ニワトリへの免疫を実施しワクチン効果の評価を行った。また、他の候補1分子について合成ペプチドをウサギに免疫し、抗血清を作出した。ワクチン候補分子のスクリーニングへの適用を予定していたRNAiによるノックダウンは、現在までに有効な手法の確立に至らず、ワクチン候補分子をニワトリに免疫し、その血液をin vitroでワクモに吸血させることでワクチン効果の評価を実施している。

今後の研究の推進方策

薬剤抵抗性および感受性の遺伝子診断確立のため、ピレスロイド系薬剤の標的であるNaチャネル遺伝子、有機リンおよびカーバメート系薬剤の標的であるコリンエテラーゼ遺伝子に認められた塩基配列多型について、簡便な1塩基多型の検出方法の確立を目指す。昆虫成長制御剤についても、標的分子であるワクモCHS1オルソローグの塩基配列を解読し、抵抗性の責任部位を特定、簡便な変異検出検出法の確立を目指す。
ワクチンについては、既に作出したワクモアクアポリン様分子に対するペプチド抗体を添加したニワトリ血液をワクモに吸血させ、吸血後の生存率や脱皮等に対する効果からワクチン効果の評価を行う。

次年度使用額が生じた理由

初年度にワクチン候補遺伝子のクローニングおよび発現まで計画通りに進んだが、発現産物の封入体形成や発現量の問題により発現産物の精製が遅れた。前年度はこれらの理由により次年度使用額の発生に至り、現在もその影響が続いている。また、各種薬剤抵抗性を決定する遺伝子の簡便な多型検出に至らず分子疫学的解析の着手には至らなかった。以上の理由から次年度使用額が発生した。今年度は、既に作出した抗血清を用い、ワクチン効果の評価を実施する予定である。薬剤抵抗性に関与する塩基配列の多型検出については、カーバメート、有機リン系および昆虫成長制御剤の各標的分子について、コンベンショナルおよびリアルタイムPCR等による検出の可能性を検討する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] ワクモ(Dermanyssus gallinae)におけるPeritrophic Matrix Proteinsの探索2018

    • 著者名/発表者名
      岡田遙江,村野多可子,富岡幸子,北村夕子,豊嶋愛,笛吹達史,山口剛士
    • 学会等名
      第161回日本獣医学会学術集会

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公開日: 2019-12-27  

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