研究課題/領域番号 |
17K08106
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
松鵜 彩 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 准教授 (40348595)
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研究分担者 |
寸田 祐嗣 鳥取大学, 農学部, 准教授 (20451403)
桃井 康行 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 教授 (40303515)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高病原性鳥インフルエンザ / 地鶏 / 発現変動遺伝子 |
研究実績の概要 |
高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)は家禽に対して強力な病原性を有するHPAIウイルス(HPAIV)によって引き起こされる疾患であり、畜産界においては甚大な被害をもたらす重要疾病の一つである。ウイルス側の病原性決定因子については多くの研究が行われているが、宿主側の防御機構については不明な点が多い。鶏における感染制御因子の特定やその機序の解明は新たな予防戦略や制圧につながるものであり、早期解明が必要である。我々は予備実験において国産地鶏がHPAIに対して耐性形質である可能性に着目した。HPAIV感染後の宿主応答について網羅的に把握することにより、鶏の感染制御因子の特定に有用であると考えている。 本研究ではHPAIV耐性形質を有する鶏群を用いて、感染後の臓器における発現変動遺伝子を網羅的に把握し、鶏におけるHPAIV抵抗性因子の特定と防御機構の解明に向けた研究基盤を築くことを目的とした。これまでに3種類の地鶏を用いた感染実験と採材を行い、感染初期(72時間以内)の臓器について組織解析と免疫関連遺伝子の発現を評価した。特に2種類の品種においてウイルス増殖が抑制されている傾向にあった。当初の計画では感染実験から得られた臓器由来RNAを用いて発現変動遺伝子について解析する予定であったが、ウイルス遺伝子が検出されず、組織病原が乏しい検体についてはウイルス感染が成立していない可能性も考えられ、検体の選択が困難であった。そのため地鶏およびコマーシャル鶏由来の鶏胎児繊維芽(CEF)細胞に対するウイルス接種を行い、発現変動遺伝子を特定し、その遺伝子の発現についてreal-time PCR法を用いて臓器検体で確認することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回新たに培養細胞に対してウイルス接種を行い、RNAを抽出後、次世代シークエンス解析を行った。具体的には10日齢発育鶏卵からCEF細胞を作成し、H5N8亜型HPAIV(106EID50)を接種後10および16時間後に細胞を洗浄したのち回収し、RNAを抽出した。ライブラリー作成後、次世代シークエンサーによるRNAシークエンスを行った(マクロジェン・ジャパン、東京)。150bpペアエンドで2,000万リードを解析した。得られたリード配は鶏のリファレンスゲノム配列(Gallus_gallus-5.0、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/assembly/GCF_000002315. 4/)にマッピングし、転写物毎のマップされたリード数をカウントした。遺伝子長さによりTPM法による正規化を行い、ウイルス感染前の細胞に比較した発現量(fold-change)およびZ-scoreを算出した。 ウイルス接種前に比べて2倍以上に亢進あるいは減少した遺伝子群(Z scoreが<-2あるいは>2)を発現変動遺伝子(differentially expressed genes: DEGs)として、リストを作成した。
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今後の研究の推進方策 |
今回得られたリストから遺伝子群の機能を解析するため、GO解析およびKEGGパスウェイ解析の二つのエンリッチメント解析を行う。免疫関連遺伝子の中で変動の大きい遺伝子を抽出し、その遺伝子発現についてreal-time PCR法による定量法を確立したのち、平成29年度までに得られた感染初期の鶏臓器における変動を確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、特に後半の研究内容は次世代シークエンス解析が中心であった。今後解析によって抽出した免疫関連遺伝子について、次年度real-time PCR定量系を確立し、鶏臓器中の発現動態について解析を行う予定である。今年度未使用未使用額については、次年度の解析について、より効率的に用いる予定である。
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