研究実績の概要 |
本研究で、犬猫の集中治療や麻酔管理に利用できる動物に優しく獣医師に易しい輸液反応性指標の確立を目指し、侵襲的な指標である1回拍出量変動率(SVV)および脈波形変動率(PPV)と非侵襲的な循環血液量の指標である脈波変動指標(PVI)の有用性を検討した。H29年度には、犬の輸液負荷モデル、循環血液量減少モデル、および血液分布異常モデルにおいて、SVV、PPV、およびPVIの信頼性と輸液反応性の明確な判断基準(カットオフ値)を基礎的に検討した。 H30年度には、猫の輸液負荷モデルにおいてPPV、SVV、およびPVIの信頼性と輸液反応性のカットオフ値を基礎的に検討し、輸液負荷による心拍出量増加に応じてSVVとPPVが減少したが、輸液反応性が乏しく、PPV、SVV、およびPVIについて有意なカットオフ値を得られなかった。循環血液量が正常な猫において、SVV、PPV、およびPVIは輸液反応性の予測能が低いと結論された。。 R元年およびR2年(研究代表者が左脳出血で入院したため研究期間延長)には、猫の循環血液量減少モデルにおいて、SVV、PPV、およびPVIの信頼性と輸液反応性のカットオフ値を基礎的に検討した。循環血液量減少による心拍出量の減少に伴ってPPV、SVV、およびPVIが増加し、循環血液量回復によって輸液反応性を示し、受信者操作特性(ROC)解析における曲線下面積(AUC)はPPV 0.88(カットオフ値≧9%,感度78%,特異度96%)、SVV 0.84(カットオフ値≧12%,感度78%,特異度89%)、およびPVI 0.72(カットオフ値≧6%,感度89%,特異度58%)であった。循環血液量減少のある猫では、PPV、SVV、およびPVIは中等度の輸液反応性予測能を示すと結論された。
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