研究課題/領域番号 |
17K08110
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
加納 塁 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (00318388)
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研究分担者 |
鈴木 一由 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (30339296)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細菌叢 / 藻類 / 乳房炎 / プロトテカ / メタゲノム解析 |
研究実績の概要 |
牛のプロトテカ乳房炎に対する防除法を目的として、NOSAI愛知とNOSAI道東の協力で分子疫学調査を行った。今年度は感染源特定のため、慢性プロトテカ乳房炎発生農家(一戸、60頭中4頭から乳汁分離)および非発生農家(5戸、334頭)における、糞便中からプロトテカを分離し、その遺伝子型が乳房炎乳汁から分離される遺伝子型(genotype 2)と同じかどうか調べた。その結果、発生農家では60頭中23頭の糞便陽性(38%陽性)で、陰性農家では、僅か1頭からgenotype 2が分離された。プロトテカ乳房炎発生農家においては、消化管内でプロトテカが異常に増殖している個体数が増え、それら汚染した糞便からの乳房への感染が生じていることが考えられた。つまり、消化管内のプロトテカの異常増殖の解明および制御法の確立が、防除法に必要であると考えられた。また汚染した糞便からの感染を減らすために、糞便の除去および汚染物の乾燥が重要であることが改めて確認された。 次に、プロトテカ感染乳房内環境を調べるために、プロトテカ排泄乳汁および健常乳汁からそれぞれDNAを抽出し、細菌の16SリボゾームDNAを特異的にPCRで増幅後、次世代シーケンサーを用いたメタゲノム解析を行った。その結果、プロトテカ排泄乳汁の特徴として、シアノバクテリアが増加しているが、健常乳からは検出されないことが確認された。プロトテカ乳房炎では、何らかの原因で細菌叢も変化していることが確認された。乳房環境の変化について、今後は調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従って今年度は、釧路地域および愛知におけるプロトテカ感染乳汁および糞便の解析を行うことができた。得られた結果は上述したように新知見をもたらすものと期待され、学術論文として投稿した。ただし得られたプロトテカ感染乳汁・糞便のサンプル数がやや少なかったため、プロトテカ乳房炎において普遍的に認められる現象であるか、今後も追加解析が必要であると考えている。 一方、昨年度後期から愛知農済において最終年度の計画である防除法の検討を開始しているため、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従って今年度は、釧路地域および愛知におけるプロトテカ発生農場を対象に、防除法の検討を行う。まずは、糞便中のプロトテカ増加と乳房炎の発症が相関している牛群について、消化管内微生物叢を改善後、経時的に糞便中、乳汁中のプロトテカの分離率の変化を調べる。また糞便中および乳汁中の細菌叢の変化について次世代シーケンサー解析を行うことによって、消化管内のプロトテカの異常増加の機序解明を行う。 また前年度に得られた結果から、プロトテカ乳房炎牛に治療を行い、治癒前後の遺伝子検査結果の変化を調べ、治療効果および遺伝子検査の相関を調べる。 このように今年度は、本研究協力者が所属する釧路地域および愛知県下のプロトテカ発生農家について、防除法の検討および乳汁・糞便細菌叢の解析を行うため、本研究の進捗に大きな障害は発生しないと考えている。また既にサンプリングについて準備・打ち合わせを行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画のサンプリングが、研究協力者との事前調整によって計画よりも短時間で最小回数でサンプリングを行うことができた。また、次世代シーケンス解析も、既に準備・練習していたため、試薬のロスおよび追加実験を行うことがほとんど無く、目標の結果を得られたため予算よりも少ない経費で完了した。得られた成果は論文として発表することができた。また次年度使用額は、計画に従って、釧路地域および愛知地域におけるプロトテカ乳房炎防除の検討および次世代シーケンサー解析に必要な試薬および消耗品として使用する予定である。
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備考 |
上記HP上に、本科研費によるSupportを受けていることを掲載している。
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