愛知農済との共同研究の一環として、愛知県下のプロトテカ乳房炎発症農家における、乳房炎牛(4頭)および非乳房炎乳牛(8頭)の乳牛から、乳汁および糞便をそれぞれ採取した。 乳汁中のプロトテカを定法に従って分離するとともに、遺伝子抽出を行った。また糞便からも遺伝子を抽出した。抽出した各遺伝子を鋳型として、細菌の16Sリボゾーム領域を特異的にPCRにて増幅し、それぞれのライブラリーを標識後、次世代シーケンサー解析を行った。乳汁中の細菌叢は、既に過去の乳汁からの細菌分離調査報告と同様、コリネバクテリウムなどの遺伝子検出されたが、感染牛乳汁からはシアノバクテリア(Calothrix desertica)の遺伝子が、優位に検出されることが確認された。一方、糞便からは、感染牛および非感染牛とも同様の細菌叢を呈していることが示唆された。 この結果は、釧路におけるプロトテカ乳房炎乳汁と非乳房炎についての次世代シーケンサー解析結果同様に、シアノバクテリアが優位に乳房炎乳汁中から検出されることが共通的に確認された。このシアノバクテリアの検出は、本疾患の解明に役立つことが考えられる。例えば、藻類のプロトテカ乳房炎は、プロトテカが乳房内で異常に増殖して、乳房炎を引き起こしているだけではなく、乳房内微生物環境まで変化させていることを初めて明らかにしたことは、本研究目的で予想された成果を得られたと考えている。 またプロトテカ乳房炎の新規防除法の候補として、2018年に国内で上市されたアゾール系薬剤のラブコナゾールを今後のプロトテカ乳房炎、さらに人の感染症に対する治療薬としても期待される。このように治療法についても、研究目的を十分上回る結果が得られた。
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