研究課題/領域番号 |
17K08114
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
原 康 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (00228628)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | クッシング症候群 / 高コルチゾール血症 / 心筋肥大 / 三次元心エコー / 心内腔容積 / 心筋線維化 / グルココルチコイド受容体 |
研究実績の概要 |
今年度は、前年に引き続き、犬の高コルチゾール血症モデルを作成し、それが心臓、特に僧帽弁装置にどのような影響をもたらすのかを、3次元的な心エコー装置および心筋バイ オマーカーの測定を行うことで評価する研究と同時に病理組織学変化すなわち心筋の線維化およびグルココルチコイド受容体の減少などを評価した。今年度の補助金は、主に上記の研究を 遂行するための心筋バイオマーカーをはじめとする血液生化学検査の外注費用および病理組織学的研究を遂行するための抗体の購入に当てられた。 現在、実施予定6頭の解析が終了した。心エコー検査結果では高コルチゾール血症が弁ではなく心筋の肥大を引き起こしていること が示唆され、大変興味深い結果となった。人医領域では高コルチゾール血症が左心室の肥大を引き起こしたり、心機能障害を引き起こしたりする可能性があることが知られている。獣医領域でも、従来から用いられている2次元的な心エコー図検査項目において、心筋が肥大する可能性が報告されているが、3次元的な心内腔容積の評価を行った報告はまだない。また、血中のコルチゾール濃度と心筋バイオマーカーを用いた心筋障害の影響についても明らかにはされていない。 現在までの解析では3次元心エコーにより、心内腔容積が減少していることが示唆されている。また、心筋バイオマーカーはそれほど変化しない可能性があるため今後の解析結果と合わせて判断していく予定である。病理組織学的研究においても心筋の線維化が心室中隔や左心室で確認され、興味深い結果を得た。来年度、研究結果を国内の学会で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高コルチゾール血症モデルの6頭の心エコー検査結果は投薬前と比較して、投薬後に心室中隔壁厚と左室自由壁厚はそれぞれ有意に増加していた。また左室拡張末期圧 と良好に相関すると言われている拡張早期左室流入血流速度/拡張早期拡張早期僧帽弁輪心筋速度E/Emは有意に増加していた。心筋の肥大により、左心室の拡張機能が低下したためにこのような結果が認められたと考えている。 また、三次元心エコーによる心内腔容積の測定においては、投薬後、有意な減少が認められた。この結果は、コルチゾールの大量暴露により同心円状の心筋リモデリングや線維化が心筋に起きた結果として、心筋肥大が引き起こされたと考えられ る。一方心筋のバイオマーカーは心房性利尿ナトリウムペプチド、脳性利尿ナトリウムペプチド、心筋トロポニンIの3種類のバイオマーカーの測定を行なったが、有意な変化は認められなかった。また病理組織学的な変化について、新たな検討を行なった結果、高コルチゾール血症モデルでは心室中隔と左室自由壁において、有意な膠原線維の増加が認められた。本研究結果を9月に実施される日本獣医学会で発表後、問題点を確認後論文投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は心筋、弁装置、大血管などのサンプルを用いて、高コルチゾール血症がそれらに引き起こした変化を病理学的に検討してく予定である。膠原線維の量に有意な増加がモデルでは認められているため、それらが起きた原因となる異化タンパクの発現を免疫染色、PCRなどを用いて検討していく予定である。具体的にはグルココルチコイド受容体、ミネラルコルチコイド受容体11βーHSDなどの発現の変化を検討してく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は病理組織学的検討に使用する抗体の種類が決定できていなかったので、予想より使用額が少なかった。次年度は使用する抗体の購入やその他、必要が生じた物品の購入に充てる予定である。
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