今年度は、犬の高コルチゾール血症モデルの心臓病理組織学変化すなわち心筋の線維化、グルココルチコイド受容体の減少およびミネラルコルチコイド受容体の増加などを評価し、これまでの研究成果をまとめた。今年度の補助金は、主に上記の病理組織学的研究を遂行するための抗体の購入や論文発表のための英文校閲費用などに当てられた。 実施予定をしていた6頭すべての解析が終了した。 人医領域では高コルチゾール血症が左心室の肥大を引き起こしたり、心機能障害を引き起こしたりする可能性があることが知られている。獣医領域でも、従来から用いられている2次元的な心エコー図検査項目において、心筋が肥大する可能性が報告されているが、3次元的な心内腔容積の評価を行った報告や病理組織学的な観点からの報告はほとんどない。本研究は病理組織学的研究において、心筋の線維化が心室中隔や左心室で確認され、グルココルチコイド受容体のダウンレギュレーションとミネラルコルチコイド受容体のアップレギュレーションが心筋肥大に関与している可能性があるという大変興味深い結果を得た。 本研究結果は第162回日本獣医学会学術集会にて、2題、研究発表を行った。今回得られた結果を、現在、海外雑誌へ投稿中である。本研究は犬の内分泌疾患に多いクッシング症候群において、心臓に及ぼす影響を臨床的な評価項目および病理組織学的な変化について検討した基礎的な研究であり、今後さらに分子病態学的なメカニズムについて検討する上で重要な研究となり得ることが示された。
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