研究課題/領域番号 |
17K08115
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
堀 達也 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (80277665)
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研究分担者 |
岡田 幸之助 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 准教授 (60445830)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 犬 / 卵子 / 体外成熟培養 / 体外受精 / 顕微授精 / 生殖子保存 |
研究実績の概要 |
摘出された卵巣から回収された卵子は未成熟な状態の卵子であるため、体外受精および顕微授精技術を確立するための研究に使用するためには体外にて培養し、成熟させなくてはならない。しかし、犬において卵子の体外培養技術はまだ確立されておらず、成熟させることが難しい。今回は、犬の卵子に類似していると考えられる(卵黄中の脂肪が犬と同じように多いため)豚卵子の体外受精成熟培養方法を応用して、犬の体外成熟培養について検討してきた。培地として豚卵子で使用されている高性能卵子成熟用基本培地(HP-POM)を使用して、添加するホルモン剤としてFSHおよびLHについて検討した。しかし、体外成熟率をそれほど上昇させることができなかった。 次に、卵子の回収方法についての検討を行った。すなわち、これまで卵巣の切り刻み方により卵子を回収していたが、この方法では血液が混じってしまうことで卵子の成熟に影響を与える可能性があること、また成熟状況がさまざまな卵母細胞が回収できるが、成熟度の低い卵母細胞は培養しても成熟しないため使用できないなども問題点として挙げられる。そこで、新しい卵母細胞の回収方法として、顕微鏡下で外科用メスを使用して卵胞を切出し、健常卵胞のみを摘出する卵胞切出し法を採用して行った。この方法は豚において使用されている方法であるが、卵胞内で浮遊している卵母細胞は成熟率が低いことが明らかとなっているため、浮遊していない卵子だけを回収して、成熟培養を行うこととした。しかし、犬卵巣は豚卵巣よりも小さく、卵胞を回収することが比較的難しいこと、手に入る卵巣が様々な発情周期であり、黄体が存在する卵巣は使用することが難しいため、研究期間中にまだ多くの検討を行うことができなかったため、体外成熟率を比較することができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
犬の卵巣から回収した卵子の体外成熟培養を試みているが、その成熟率はやはり低いため、その後の研究に進めない状況である。したがって、次の顕微授精の研究において、犬の卵母細胞を使用することが難しいと考えた。これに代わる方法として、犬の卵母細胞と同じように多くの脂質が含まれている豚の卵母細胞を使用して実験を行うこととして研究を進めている。そのため、全体の実験の進行がやや遅れてしまっている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
犬における顕微授精(細胞質内精子注入法)技術を確立するための研究として、顕微授精後の雌雄前核形成による種々の処理精子の受精能の判定についての研究を計画し、研究を進めている。これまでに犬の顕微授精によって産子を得たという成功例はなく、いくつかある報告の中にも犬の卵母細胞を使用した報告がなく、他の動物の卵母細胞を使用している(マウス卵母細胞とめん羊卵母細胞)。 そこで、犬卵母細胞の代わりに豚卵母細胞を使用して、犬精子への異なる処理が顕微授精後の雄性前核形成率にどのような影響を及ぼすかについて明らかにするための研究を計画する。この時使用する精子としては、新鮮精子、低温(4℃)保存精子、凍結保存精子、精巣上体頭部精子および尾部精子を選択し、顕微授精時にいずれの精子を使用しても、その後の正常受精率(や胚発生率)に影響を及ぼさないかどうかを検討することを計画して、研究を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であったマイクロウォームプレートと液体窒素タンクについて購入を検討していたため、次年度使用額が生じた。
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