研究実績の概要 |
本研究の目的は、3Dプリンターでイヌの立体人工肝臓を構築することである。これまで我々は、生体外で長期間培養できる肝細胞の作製を試みてきた。しかしながら、肝細胞は単層で培養すると、薬物代謝能を発揮できないばかりでなく、わずか数日しか生存維持ができない。そこで、本研究では3Dプリンター技術を用いて、肝細胞やiPSを細胞ソースとして約500ミクロンの細胞凝集塊を作成し、凝集塊を3Dプリンター技術を用いて積層し、薬物代謝能を持った生体外肝組織の構築を目指すことを最終目標とした。 平成29年度は、細胞ソースとして肝がん細胞、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、イヌ間葉系幹細胞(At-MSC)を用い、凝集塊作製のための予備検討を行った。平成30年度は、細胞ソースを犬初代肝細胞に変更し、cHep 1.0×10^4/well; HUVEC 0.7×10^4/well cASC, 1.0×10^4/wellで混合した時に最も凝集塊が球形に近い形態を示した。しかしこの条件で作製した凝集塊を3Dプリンターを用いて積層したところ、3次元構造のHE染色では細胞死を呈する細胞が多かった。その原因を凝集塊レベルでの細胞生存と考え、令和元年度は、低速遠心による死細胞除去、培地の配合比率、増殖因子の量の検討を試みた。また、骨髄由来間様系幹細胞にダイレクトリプログラミングを施して作製した肝様細胞induced Hepatocytes (iHep)を細胞ソースとして凝集塊作製を試みた。得られた細胞凝集塊に関してReal time PCRにて肝関連遺伝子発現の検討、組織学的評価を行った結果、凝集塊はCYP2E1を低いレベルで、AFP, E-カドヘリンは高いレベルで遺伝子発現が維持され、アルブミンは蛋白レベルで発現維持も確認できた。本研究では薬物代謝能を維持し、3次元積層に適した凝集塊の作製に成功した。
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