研究実績の概要 |
本研究の目的は「アセチルコリン(ACh)関連酵素のグリア細胞活性化への制御可能性とその機序について明らかにすること」である。この目的を達成するために本年度は,AChEがグリア細胞の活性化制御因子として働くかを検討した。新生子マウスから調整したAstrocyte初代培養細胞を用いて,Astrocyte活性化時のAChEの酵素活性を測定した。活性化誘導因子(IL-1alpha,IL-1beta, IFN-gamma, TNF-alpha, LPS)により活性化したAtrocyteでは,AChE酵素活性が増加傾向を示した。前年度の研究結果により,マウス脳損傷モデルでは脳損傷部位にAChが多く見られたことから,AChと活性化誘導因子を処理しAChE活性の変化を検討した。AChと活性化誘導因子処理により,アストロサイト細胞内および培養上清中のどちらのAChE酵素活性も有意に増加した。AChE阻害剤Hupperzine Aを処理によって,活性化誘導因子処理によって増加したAChE酵素活性は減少したが,一方で,活性化マーカー(IL-6,IL-1beta,TNF-alpha)のmRNA発現レベル増加には有意な影響を示すことはなかった。脳損傷部位へのAChEの影響を検討するため,マウス脳損傷モデルを用いて,AChE阻害剤Donepezilを投与してAChE活性を阻害したときの脳損傷部位への影響を検討した。脳損傷処置7日後の損傷部位の直径が予想外にもDonepezil投与により増加した。また,その免役組織学的検索ではAstrosyteマーカーGFAP陽性細胞は変化が見られなかったが,Donepezil 投与によりMicroglia/MacrophageマーカーCD68陽性細胞が増加した。これらのことから,AChEはAstrocyteよりもmicrogliaに作用する可能性が考えられた。
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