哺乳類の母親は母乳を介して多くのエネルギーを子に分け与える。しかしエネルギーを失うことは母親の生存にとって決して望ましいことではない。そのため、例えば母マウスは厳しいエネルギー状態になると子育てを中断する。その一方で、それなりに厳しいエネルギー状態でも母マウスは授乳し続ける性質を持つ。我々は厳しいエネルギー状態でも子育てに向かう仕組みを母親は備えている可能性を考えた。 本研究から、オキシトシンが背側縫線核に作用することで母マウスは厳しいエネルギー状態でも子育てをすることが明らかになった。十分なエネルギー状態ではこのオキシトシンの機能は必要ないことから、オキシトシンの働きによって母マウスは厳しいエネルギー状態でも子育てを継続すると考えられる。またオキシトシンは視床下部の室傍核からホルモンや神経伝達物質として分泌されず拡散などの方法で背側縫線核に作用している可能性が示唆された。 さらに本研究では背側縫線核を介した養育行動や攻撃行動の調節機構を解析した。 その結果、シグナルが養育行動と攻撃行動を相反的に制御していることが明らかになった。さらに副腎皮質刺激放出因子が養育行動の発現に必要であることが明らかになった。
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