研究課題/領域番号 |
17K08121
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
柴田 秀史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50145190)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 腸神経系 / 腸壁 / 粘液細胞 / 筋層間神経叢 / ウサギ / 近位結腸 / 遠位結腸 / 結腸紡錘 |
研究実績の概要 |
ウサギにおいて,盲腸糞形成にもっとも重要な役割を果たす大腸各部位の腸壁の厚さをパラフィン切片,ヘマトキシリンエオジン染色,ImageJによる画像解析によって明らかにした.その結果,結腸紡錘の腸壁がもっとも厚く1162.67マイクロメーターに達し,次いで,直腸,近位結腸腸第一分節,近位結腸第二分節,遠位結腸,盲腸の順に腸壁が薄くなることがわかった.筋層は近位結腸第一分節と第二分節で厚かった.以上の結果,結腸紡錘の粘液分泌における重要性と,近位結腸における内容物の攪拌・移動に必要な腸管運動の重要性が示唆された. 次に,粘膜における粘液細胞の分布をパラフィン切片,アルシアンブルー染色で検索した.その結果,結腸紡錘にもっとも多くの粘液細胞が存在し,次いで,近位結腸第二分節,遠位結腸,直腸,近位結腸第一分節の順に少なくなり,盲腸でもっとも少ないことがわかった.結腸紡錘および近位結腸第二分節では粘膜の浅層と深層で粘液細胞の分布に違いが見られた.これらの結果は,結腸紡錘と近位結腸第二分節が粘液分泌に重要な役割を果たすことを示唆する. さらに,大腸の筋層間神経叢における腸神経系の分布を免疫組織化学的に明らかにした.汎神経マーカーである抗PGP9.5抗体による免疫組織化学法によって,筋層間神経叢がもっとも発達しているのは近位結腸第一分節で,次いで,近位結腸第二分節,結腸紡錘,遠位結腸であり,盲腸ではもっとも発達が悪いことがわかった.抑制性ニューロンのマーカーである一酸化窒素合成酵素に対する抗体および内在性一次求心ニューロンのマーカーでカルシウム結合タンパクの一種であるカルビンジンに対する抗体を使用して免疫組織化学染色を行ったところ,それらのマーカーの陽性構造の分布はPGP9.5陽性構造と同様であることがわかった.これらの結果,近位結腸が精密な大腸運動を行うことができる可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ウサギ大腸における腸神経系を染色するために使用する抗体は,(1)ラットやマウスでの先行研究で使用されているものと同じ抗体を使用しても,おそらく抗原の種特異性のために,染色が成功しないことがあったこと.(2)大腸の全載標本の作製が,小腸や他の動物種(例えばモルモット)を使用する場合と比べて困難な部位が多く,手技の修得に時間がかかっていること,の2点のために計画よりも遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,ウサギの組織を免疫染色するために,ウサギ以外の動物種で使用した一次抗体を使用して間接酵素抗体法で免疫染色を試みた.そこで,平成30年度はウサギで作成した抗体に発色物質が直接結合されている一次抗体を使用する直接酵素抗体法あるいは直接蛍光抗体法によって,抗原の可視化を試みる.全載標本の作製が困難である場合には,弯曲して厚みのある腸管の組織を凍結ステージに押しつけた状態で凍結し,接線方向の凍結切片を作成することによって,免疫染色していく.これらの方法を試みることによって,今年度は研究が予定通り進展するものと確信する.
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の物品が予想より低価格で入手できたため.次年度以降に物品費として使用予定.
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