大腸における消化機能は腸神経系によって制御される.腸神経系は筋層間神経叢と粘膜下神経叢からなり,神経叢を構成するニューロンには種々の神経伝達物質/神経関連物質が含まれる.ソマトスタチンは視床下部や膵臓のランゲルハンス島に加えて腸神経系のニューロンにも含まれることが知られている.ウサギでは,大腸は,消化できない内容物の残渣を含む通常糞と,ビタミンやミネラルといった栄養素に富む盲腸糞を作り分けており,大腸におけるソマトスタチン含有ニューロンの役割がより重要である可能性が考えられる,しかし,ウサギ大腸におけるソマトスタチン含有ニューロンの分布は明らかにされていない.そこで,免疫組織化学的手法により,ウサギ大腸の各分節におけるソマトスタチン免疫陽性ニューロンの詳細な分布を明らかにした.ソマトスタチン陽性神経細胞体および線維は,筋層間神経叢においては,結腸紡錘にもっとも豊富に分布し,ついで,遠位結腸,近位結腸(第一および第二分節),盲腸の順に分布が減少した.それに対して粘膜下神経叢では,近位結腸(第一および第二分節)にもっとも豊富で,ついで,結腸紡錘,遠位結腸,盲腸の順に分布が減少した.さらに,粘膜におけるソマトスタチン陽性線維は,近位結腸第二分節と結腸紡錘にもっとも豊富で,近位結腸第一分節,遠位結腸,盲腸の順に減少した.これらの結果,筋層間神経叢に存在する腸管運動を制御する下行性介在ニューロンの一部と考えられるソマトスタチン陽性ニューロンが結腸紡錘に豊富であることと,粘膜下神経叢に存在し粘膜に線維を伸ばして液状成分の輸送に関与すると考えられるソマトスタチン陽性ニューロンが近位結腸に豊富であることがわかった.従って,これらの分節が大腸機能,特に,結腸紡錘は通常糞と盲腸糞の形成に必須である腸管運動において,近位結腸は腸管内容物の水分量調節において重要な役割を果たすことが示唆された.
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