研究実績の概要 |
本年度はフィチン酸給与がニワトリ腸管免疫関連遺伝子発現に及ぼす影響を検討した。フィチン酸はイノシトール類縁物質であり、IL-8産生抑制などフィチン酸は免疫に対して抑制的に作用すると考えられている。本試験では腸管免疫免疫に対する作用研究の一環として、フィチン酸給与がニワトリの腸管免疫関連遺伝子発現に対する作用を調査した。 ボリスブラウン雄初生ヒナに市販のヒナ用飼料または0.1%フィチン酸添加飼料を21日間給与した。0日、6日及び21日齢時に回腸末端とその中の腸管内容物及び血液を採取した。血液は血漿調製後、カルシウム、リン及び亜鉛濃度を比色法により測定した。また、免疫グロブリン(Ig)A及びG濃度をそれぞれELISA法により測定した。腸組織は総RNAを抽出し、市販のキットによりcDNA調製後、real-time PCR法により、抗原受容体であるトール様受容体(TLR)-2及び4、7、T細胞数の指標としてCD3、B細胞数の指標としてBu-1、炎症関連遺伝子としてIL-1β,IFN-γ,TL1A ,IL-6,IL-10及びIL-17発現量を測定した。 6日及び21日齢における体重、リン及び血漿亜鉛濃度はフィチン酸給与の影響を受けなかった。カルシウム濃度はフィチン酸給与により低下する傾向にあった。21日齢時腸管のTLR-2,4及び7mRNA発現量はフィチン酸給与により低下した。その他の炎症に関与する因子のmRNA発現量もフィチン酸給与により低い値を示した。一方、CD3、IL-2及びBu-1 mRNA発現量はフィチン酸給与の影響を受けなかった。血漿IgG及びIgA濃度はフィチン酸給与により低下する傾向にあった。これらのことからフィチン酸は腸管免疫関連遺伝子発現を低下させる因子であることを確認し腸管免疫を調査する物質として有用と考えられた。
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