研究課題/領域番号 |
17K08126
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
荒谷 康昭 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科(八景キャンパス), 教授 (30192470)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 免疫 / 好中球 / マクロファージ / 活性酸素 / ミエロペルオキシダーゼ |
研究実績の概要 |
好中球やマクロファージなどの食細胞は、病原菌を貪食して活性酸素を放出することによって感染防御を営んでいる。これらの貪食細胞は、食細胞NADPHオキシダーゼの触媒によって酸素からスーパーオキシド(O2-)を産生し、O2-は自発的に過酸化水素(H2O2)へと代謝される。さらに好中球においては、ミエロペルオキシダーゼの触媒によって、H2O2から次亜塩素酸が生成する。本研究は、食細胞NADPHオキシダーゼのノックアウトマウス (CGDマウス)やMPOのノックアウトマウス (MPO-KOマウス)が、非感染的に重篤な炎症疾患を発症するという興味深い現象の分子メカニズムを探ることを目的とした。 MPO-KOマウスやCGDマウスは、ザイモザンやカンジダ死菌に曝されるだけで非感染的に重篤な肺炎を発症する興味深い現象を発見し、MPO-KO好中球からのMIP-2過剰産生、あるいはCGDマクロファージからのKC過剰産生が、各々のマウスの肺炎重篤化の一因であることをすでに報告している。本年度はさらに、CGDマウスが野生型マウスよりも重篤なザイモザン誘発生関節炎や脾臓炎症をも発症し、患部からのKC過剰産生が炎症重篤化の一因である可能性を明らかにした。そこで、MPO-KO好中球からのMIP-2過剰産生とCGDマクロファージからのKC過剰産生の分子メカニズムを探った。その結果、ザイモザンおよびカンジダ死菌の主要パターン認識受容体である、TLR2、TLR4、dectin-1、CR3が、好中球からのMIP-2の産生にもマクロファージからのKCの産生にも寄与していること、およびそれらの受容体の主要シグナル伝達系であるp38MAPK経路、ERK経路、JNK経路の一部が過剰に活性化されていることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H30年度の研究成果は、国内学会にて口頭もしくはポスター発表を行った。また、MPO-KOマウス好中球からのMIP-2過剰産生の分子メカニズムに関する研究成果は、学術論文として公表すべく執筆中である。研究対象としている分子メカニズムは予想以上に複雑であるため少々の遅れがある。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度の進捗にやや遅れがあるが、研究課題に関わる興味深い知見が着実に蓄積しているので、MPO-KOマウスおよびCGDマウスを対象とした研究を精力的に継続し、本研究の目的である炎症重篤化の分子メカニズムの全貌を解き、それぞれ学術論文として公表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学術論文を執筆中であるが、やや遅れておりH30年度中に投稿するまでには至らなかった。そのため投稿費用が次年度使用額として残された。次年度早々に投稿を完了し、そのための費用として使用する。
|