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2018 年度 実施状況報告書

卵巣におけるキスペプチンネットワークの機能

研究課題

研究課題/領域番号 17K08128
研究機関岡山理科大学

研究代表者

汾陽 光盛  岡山理科大学, 獣医学部, 教授 (00153007)

研究分担者 久留主 志朗  北里大学, 獣医学部, 教授 (50215076)
寺島 涼太  北里大学, 獣医学部, 助教 (50733630)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードキスペプチン / GnRH / 卵巣 / 黄体化 / NKB / ダイノルフィン / hCG
研究実績の概要

視床下部で性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)神経の活動を調節するキスペプチンが、卵巣の顆粒層細胞にも発現し、排卵前のLHサージによって著しく発現の促進されることを発見・報告している(Laoharatchatathanin et. al., 2015)。本研究計画では、キスペプチンとGnRHを始めニューロキニンBやダイノルフィンなどの視床下部で関連の認められる神経ペプチドの卵巣での機能を明らかにする。
初年度は、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)を投与して黄体化を誘起する幼若ラットモデルと顆粒層細胞の初代培養系を用いて、1)hCG投与によって、卵巣のGnRHとANXA5発現の増加することを明らかにした。2)初代培養顆粒層細胞で、hCGのプロジェステロン合成促進作用を、 GnRHが抑制し、hCGとGnRHに相互作用のあることが明らかになった。3)hCGとGnRHは、相加的に顆粒層細胞のLH受容体発現を促進し、 FSH受容体発現を有意に抑制した。4)黄体化に関与する遺伝子(p21、p27、FOXO1、プロラクチン受容体)の発現に対する作用もhCGとGnRHは相加的だった。これらの結果を受け、昨年度は、GnRHとキスペプチン、ダイノルフィン、ニューロキニンBの顆粒層細胞内での相互作用に着目した。これら全ての視床下部因子が顆粒層細胞に発現していること、hCGによって発現の増加することをインビボ、インビトロで観察した。更にGnRHがキスペプチン発現を促進すること、視床下部とは異なりキスペプチンはGnRH発現に影響しないことを明らかにした。GnRHはニューロキニンBとダイノルフィンの発現も促進した。これらの結果は、LHサージ後の顆粒層細胞黄体化の過程でこれら神経ホルモンが相互作用していることを示唆している。これらの成果を公表準備中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、局所でのGnRHと顆粒層細胞に発現するキスペプチン、ニューロキニンBやダイノルフィンの関係を明らかにすることを目的とした。キスペプチンが、顆粒層細胞でもGnRH調節系として機能しているのかどうか調べたが、視床下部とは異なりキスペプチンにGnRH合成促進作用は認められず、逆にGnRHがキスペプチン合成を促進する結果が得られた。排卵前のLHサージによってキスペプチンやニューロキニンB、ダイノルフィンおよびGnRH合成が促進されるので、依然顆粒層細胞の黄体細胞への分化の過程に重要な役割を担っている可能性がある。次の諸問題が残されている。
1)顆粒層細胞の黄体細胞への分化との関係 黄体細胞への分化におけるGnRH、キスペプチン、ニューロキニンB、ダイノルフィン、ANXA5の働きを解明する。LHが細胞周期を停止し、分化を促進することが分かっているので、各ペプチドがLHの下流で作用する可能性を検討する。
2)黄体細胞のステロイド産生能に対する影響 ステロイド合成系への作用を解明する。分化の進んだ黄体では、旺盛なプロジェステロン合成が行われる。ステロイド産生酵素への影響だけで無く、コレステロール移送などを含めてそれぞれの影響を調べる。
実験の進行に従って、継続実験を行う。卵巣での知見を他組織に当てはめられるかを検討する。LHによって顆粒層細胞で明確に発現の増加する神経ペプチドが、卵胞発育、排卵、黄体化(或いは卵胞閉鎖)に無関係とは考えにくいが、もしこれらと相関が無かった場合には、卵の成熟や受精能など他の排卵に伴う卵巣での現象との相関を調べる。

今後の研究の推進方策

最終年度は、2年目までに行ってきた実験の整理確認、補完実験を主に行うが、GnRH欠損マウス(hpg)とキスペプチンノックアウトラットの導入を試み、外部からのホルモン処置で卵胞の発育と排卵を誘起し、黄体化が起こるか、形態的に変化があるか、ダイノルフィン、ニューロキニンBを初めとして調べてきた遺伝子の発現変動に影響があるかなどを調べ、相互作用に加えて作用のヒエラルキーを明らかにすることを試みる。申請書には、3年目の研究を明治大学で行うと記したが、その後状況が変わり、岡山理科大学獣医学部に職を得、研究を継続している。共同研究者は北里大学にいて実験を継続している。岡山理科大では、細胞培養施設、レーザー顕微鏡(ZEISS LSM880)、その他必要な設備は整っている。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Effects of gonadotropin-releasing hormone agonist on human chorionic gonadotropin activity in granulosa cells of immature female rats.2018

    • 著者名/発表者名
      Doungrut T, Fungbun N, Laoharatchatathanin T, Terashima R, Kurusu S, and Kawaminami M.
    • 雑誌名

      J Reprod Dev

      巻: 64 ページ: 129-134

    • DOI

      10.1262/jrd.2017-142. Epub 2017 Dec 15.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] GnRHの生理機能2019

    • 著者名/発表者名
      汾陽光盛
    • 学会等名
      日本獣医師会
    • 招待講演
  • [学会発表] Distribution of Annexin A1 (ANXA1) in the Anterior Pituitary Tissue and the Effect on LH Secretion2019

    • 著者名/発表者名
      Numfa Fungbun, Ryota Terashima, Shiro Kurusu, Mitsumori Kawaminami
    • 学会等名
      ENDO2019
    • 国際学会
  • [学会発表] GnRH-アネキシンA5研究で見えた性腺刺激ホルモン分泌調節の新機構2018

    • 著者名/発表者名
      汾陽光盛
    • 学会等名
      日本下垂体研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 新規のGonadotropin releasing hormone (GnRH)感受性たんぱく質アネキシンANXA12018

    • 著者名/発表者名
      汾陽光盛、Numfa Fungbun、寺島涼太、田中優希、久留主志朗
    • 学会等名
      日本アネキシン研究会

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公開日: 2019-12-27  

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