研究実績の概要 |
社会的・心理的ストレスはアトピーなどのアレルギー性疾患、感染症の重篤化など免疫系へ影響を与えていると考えられているが、そのメカニズムは明らかではない。マウスにおいて、ストレスにより増加する糖質コルチコイドに対する受容体(GR)遺伝子配列はマウス系統により異なり、ストレスに対する感受性に相違を生じる。しかも、アレルギー反応の起こりやすさもマウス系統により異なることから、本研究ではGRの遺伝子型に着目し、心理的ストレスが与える免疫反応への影響と、その分子機序を明らかにする。 心理的ストレス感受性の違いによりもたらされる免疫学的な影響を比較するため、平成29年度には1.糖質コルチコイドによる免疫細胞におけるGR発現量の解析、2. 免疫細胞におけるGR下流遺伝子発現の解析について行った。 BALB/c、C57BL/6野生型マウスを用いて、in vivoによる糖質コルチコイド(デキサメサゾン)刺激を行い、脾臓細胞のGR mRNAの発現量を比較したところ、刺激前後およびマウス系統間では特に大きな変化は見られなかった。このことから、ストレスによるGRを介した免疫細胞への刺激は両マウス系統で共に同程度行われていることが考えられる。 これらのマウスを用いてin vivoによるデキサメサゾン刺激を行い、脾臓細胞中でのGR下流遺伝子発現をRT-qPCRを用いて解析した。その結果、刺激後はRtp801, GILZ, MKP-1, Bnip3遺伝子の優位な発現増加が認められた。水浸ストレスや拘束ストレスによる発現上昇は特にRtp801, GILZ遺伝子において認められたが、系統間の違いは見られなかった。
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