研究課題/領域番号 |
17K08130
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
滝沢 達也 麻布大学, 獣医学部, 教授 (00247305)
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研究分担者 |
田中 和明 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (50345873)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | S-ニトロシル化タンパク質 / 一酸化窒素 / 細胞分化 / プロテオミクス |
研究実績の概要 |
脂肪組織由来間葉系幹細胞(ASC)は、他の間葉系幹細胞と比較して増殖速度が早く、採取時の侵襲性が低いことから注目を集めている。これまで、イヌ及びラットのASCを、ヒストン脱アセチル化酵素阻害作用を有するバルプロ酸(VPA)で処置すると、その後の神経分化を著しく促進することを報告してきた(Kurihara et al., 2014; Okubo et al., 2016)。しかしながら、VPAによる神経分化の促進機序には不明な点が残っている。VPAが、ASCの神経分化を著しく促進する機序に一酸化窒素(NO)が関与しているかどうか、さらにその後のcGMP産生やタンパク質のS-ニトロシル化などのNOの作用機序について検討した。 ラットの皮下組織から脂肪組織を採取し、既報に従いASCを分離した。まず、VPA処置後の神経分化誘導によりiNOS、eNOS、 nNOSが産生されるかどうか検討した結果、興味深いことに、VPA処置後の神経分化誘導によりiNOS mRNAの有意な発現増加が認められたが、eNOSとnNOS mRNA発現は認められなかった。また、VPA処置後の神経分化誘導により、大半のASCがTubb3陽性の神経細胞に分化した。Tubb3陽性細胞は、iNOS陽性であり、分子プローブにより細胞内でのNO産生も確認された。次に、ASCをcGMP類似体である8-bromo-cGMP、NOドナーで処置した後に神経分化誘導すると、ASCの神経分化が有意に促進された。S-ニトロシル化タンパク質もVPA処置により増加していた。これらのことから、VPAによるラットASCの神経分化の著しい促進には、VPAにより産生誘導されるNOが関与し、cGMPを介した経路とタンパク質のS-ニトロシル化を介した経路により促進されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪組織由来間葉系幹細胞(ASC)の神経分化にNOが関与し、cGMPを介した経路とタンパク質のS-ニトロシル化を介した経路により神経分化を促進されていることが示唆され、予定どおり、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ラットASCからの神経分化に対するS-ニトロシル化の関与と、S-ニトロシル化された因子の同定や、動態解析を進め、プロテオミクス解析も行う予定である。今までの研究成果を、学会や学術雑誌に積極的に公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に注文した一部試薬について、納入予定価格の値引きが行われことから、予定価格よりも低額で購入することが可能となったため、その差額について年度内に執行できなかったことから、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、次年度の計画に加算して効率的に使用予定である。
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