研究課題
In vivoの状態を忠実に反映した高品質な新型ヒトおよびカニクイザルES・ iPS細胞を樹立するために、従来からの概念である「Naive」な多能性幹細胞を濃縮するためのレポーターとして近位エンハンサー領域を欠損させたOct3/4-⊿PEレポーターを用いるのに加え、新しい概念である「Formative」な多能性幹細胞を濃縮するためのレポーターを作製し、カニクイザルES細胞へのレポーターノックインを行った。この際、本研究センターにおいて人工繁殖技術を用いて作出したカニクイザル胚盤胞期胚から樹立したカニクイザルES細胞株を用い、レポーターノックインにはCRISPR /Cas9システムを用いることで、効率的なターゲット遺伝子改変技術の確立に成功した。さらに、狙った標的部位に変異を持つノックアウトカニクイザルの作出を試みた。常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の主要な原因遺伝子であるPkd1遺伝子に対するガイドRNAおよびCas9のmRNAをカニクイザル受精卵にインジェクションし、体外培養により胚盤胞期まで発生させ、分子生物学的手法により変異効率の確認、および仮親の子宮に胚移植を行い、遺伝子改変個体の作出を行った。結果、90%以上の胚で標的領域において変異を検出した。また、流産胎仔の解析により、腎臓、肝臓、膵臓において嚢胞の発生を確認した。さらに、生存産仔の経過観察の結果、腎臓における嚢胞発生をエコー検査によって確認した。これらの結果より、CRISPR/Cas9によるPkd1遺伝子の変異誘導により、カニクイザルにおいてADPKDの病態を再現できることが示された。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定のみならず、CRISPR/Cas9技術を、所属組織の特色の一つであるカニクイザルの発生工学的手法による遺伝子改変個体の作製に応用し、狙った標的部位に変異を持つノックアウトカニクイザルの作出を試み、CRISPR/Cas9によるPkd1遺伝子の変異誘導により、カニクイザルにおいてADPKDの病態を再現できることを示した。ADPKDは、最も頻度の高い遺伝的腎疾患であるにも関わらず、決定的な治療法は存在しない。本研究で得られた成果により、今後、ADPKDの研究が飛躍的に進展する可能性がある。
当初予定されていた実験計画に加え、CRISPR/Cas9技術による遺伝子改変カニクイザルの作出実験にも力を入れていく。これにより、当初予定していた研究との相乗効果が期待できる。
遺伝子改変カニクイザルの作製および解析に使用するため、次年度への配分を増やした。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Science Advances
巻: 3 ページ: e1602179
10.1126/sciadv.1602179
http://lab.rcals.jp/