研究課題
In vivoの状態を忠実に反映した高品質な新型ヒトおよびカニクイザルES・ iPS細胞を樹立するために、「Naive」な多能性幹細胞を濃縮するためのレポーターならびに、「Formative」な多能性幹細胞を濃縮するためのレポーターを作製し、カニクイザルES細胞へのレポーターノックインを行った。この過程で、新たに樹立したカニクイザルES細胞株(Seita Y., Tsukiyama T. et al., Biology of Reproduction)、ならびに実験初心者でも容易に培養できるよう工夫したレポーター入りのカニクイザルES細胞株(Kobayashi K., Tsukiyama T. et al., Stem Cell Research)を樹立し、それぞれ論文として報告した。また、狙った標的部位に変異を持つノックアウトカニクイザルの作出を試み、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の主要な原因遺伝子であるPkd1遺伝子を欠損した遺伝子改変個体の作出に成功した。分子生物学的手法により、全頭において変異導入を確認した上、流産胎仔ならびに生存産仔を詳細に解析した結果、腎臓、肝臓、膵臓における嚢胞発生が確認されたことから、カニクイザルにおいてADPKDの病態の再現に成功したと言える。さらに、従来のマウスを用いた疾患モデルでは再現ができなかった幼若期からの嚢胞形成も確認された。これらの結果より、カニクイザルにおいて疾患モデルを作出することにより、マウスなどの小動物を用いた従来の疾患モデルよりも正確にヒトにおける病態を再現できることが示された。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定のみならず、疾患モデル作製におけるカニクイザルの利用の有用性を明らかにしつつある。常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の主要な原因遺伝子であるPkd1遺伝子を欠損した遺伝子改変個体の作出に成功し、ADPKDの病態の再現にも成功した。さらに、従来のマウスを用いた疾患モデルでは再現ができなかった病態も再現できたことから、カニクイザルにおいて疾患モデルを作出することにより、マウスなどの小動物を用いた従来の疾患モデルよりも正確に病態の再現できることを示した。ADPKDは、最も頻度の高い遺伝的腎疾患であるにも関わらず、決定的な治療法は存在しない。本研究で得られた成果により、今後、ADPKDの研究が飛躍的に進展する可能性がある。
当初予定されていた実験計画に加え、CRISPR/Cas9技術による遺伝子改変カニクイザルの作出実験にも力を入れていく。これにより、当初予定していた研究との相乗効果が期待できる。
遺伝子改変カニクイザルの作製および解析に使用するため、次年度への配分を増やした。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Stem Cell Research
巻: 37 ページ: 101439~101439
10.1016/j.scr.2019.101439
Biology of Reproduction
巻: 100 ページ: 1440~1452
10.1093/biolre/ioz040
PLOS ONE
巻: 14 ページ: e0210060
10.1371/journal.pone.0210060
http://lab.rcals.jp/