本研究は、WTマウス・GM3S-KOマウスを用いたコナヒョウダニ由来アレルゲン軟膏塗布に起因するアトピー性皮膚炎発症にスフィンゴ脂質がいかに関与しているかを明らかにするものであり、スフィンゴ脂質欠損動物においては、アトピー性皮膚炎の発症の早期化および欠損することによる増悪することがすでに観察されていることを受け、下記の研究成果が得られた。 GM3S-KO骨髄キメラマウスを作製しアレルギーを誘導した結果、肥満細胞の機能にその原因が起因することを明らかにした。さらに肥満細胞の解析においては、KOマウスのそれにおいて機能亢進と刺激による反応性の上昇が観察された。一方、成熟肥満細胞の超微細構造を観察したところ、GM3S-KO肥満細胞では細胞内顆粒の細胞膜への偏在が認められた。これらの結果から、GM3S-KO肥満細胞のアレルギー性皮膚炎における関与が明らかになった。皮膚バリアに関するGM3Sの機能に関して、他の疾患モデルにおいては、脂質成分が皮膚バリア機能に影響を及ぼす結果が得られたが、当該モデルにおいては、それほど顕著な差が観察されなかった。一方、GM3S-KO骨髄細胞における分子シグナル解析では、KOマウスより採取した骨髄細胞から肥満細胞に分化誘導した細胞において、エキソサイトーシスの亢進がされ、さらに、各種免疫系細胞の解析を行った結果、肥満細胞の細胞膜の完全性が低下し、細胞内へのカルシウム流入が増加することを明らかにした。GM3S-KOマウスにおける脂質解析と脂質ミセルによる実験的アレルギー治療に関して、脂質解析は先行実験として終了している。治療に関しては、各種脂質を供給する企業を共同研究者として今後進めていく予定である。
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